研究課題/領域番号 |
15K16158
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研究機関 | 福島大学 |
研究代表者 |
沼田 大輔 福島大学, 経済経営学類, 准教授 (70451664)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | デポジット制度 / リユース / 回収 / 使用済み製品 / 廃棄物 / 環境経済 / 世界モデル |
研究実績の概要 |
研究代表者は2014年度にヨーロッパにおけるリユース・デポジットに関する調査を実施した。2015年度はこの調査結果をもとに「ヨーロッパにおける飲料容器デポジット制度の着眼点」と「デポジット制度と飲料容器税のポリシーミックスの特徴」についての研究に改訂を重ねた。そして、中国・イタリア・スペインでの国際学会、日本の学会等で報告し議論を交わした。イタリアでの国際学会では、廃棄物管理政策についてのベスト論文賞(Luigi Mendia Award)を受賞し、この論文のポイントを記したEditorialが、2016年6月発行のWaste Management Journal 第52巻の巻頭に掲載予定であり、研究代表者の今後の研究の進展への弾みを得ている。 また、スウェーデン・デンマークのデポジット運営機関、スウェーデン環境保護庁への訪問ヒアリング調査を実施し、両国のリユース・デポジット、特に、デンマークのリユースの仕組みについて詳細な情報を得た。スウェーデンのルンド市の清掃局、住宅供給公社にヒアリングを行い、スウェーデンの廃棄物管理について理解を深めた。 これらの知見は、研究代表者の本務校である福島大学の「環境経済学」「特別演習Japan study program IV」の授業で学生に紹介した。一般市民には、放送大学 面接授業で紹介し、福島大学 研究振興課のfacebook等で紹介された。また、福島県の3自治体にびんリユースに関する訪問ヒアリング調査を行い、福島県庁と協力して福島県全市町村と情報共有・アンケートを実施した。さらに、研究代表者のゼミ、福島大学生協、福島大学当局等で協力し、福島大学における使用済み弁当容器の回収ボックスなどについて参加型実験を実施しつつ、検討した。このように、日本におけるリユース・デポジットの把握・検討も積み重ねた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2015年度は、様々な機会に、ヨーロッパにおけるリユース・デポジットに関する調査をもとに論文を発表し、議論を交わした。また、スウェーデン・デンマークでの訪問ヒアリング調査の際に共同研究者を訪れ、研究の進捗について議論を交わした。そして、ヨーロッパにおける飲料容器デポジット制度の着眼点について、デポジット制度に関する最近の学術研究の中で位置付け、リユース・デポジット研究の今後の方向性を示すことにした。また、「デポジット制度と飲料容器税のポリシーミックスの特徴」についても、デポジット制度に関する最近の学術研究等に照らして、学術的意義を明確にすることを考えている。さらに、これまでの研究代表者の調査で、リサイクル・リユース両方の観点から十分に情報収集できているデンマークのデポジット制度を、他国のデポジット制度、および、デポジット制度の学術研究の文脈に位置付けることも新たに見通せた。このように、リユースを促進する方策・可能とする条件、デポジット制度の仕組みの情報共有について、世界レベルで体系化する準備と、それを踏まえた経済学的な分析の方向性を見出すことができた。 以上の取組と並行して、研究代表者が現在研究拠点にしている福島県で、使用済みのびんや弁当容器の効果的な回収のために、関係者と様々な取組を展開しつつ検討し、適宜、本研究からの示唆を示し、本研究への有意義なフィードバックを得た。研究代表者が座長を務めた環境省「我が国におけるびんリユースシステムの在り方に関する検討ワーキンググループ」への示唆とフィードバックもあった。この中で、日本の事例が本研究に与える意義、本研究の日本への意義が明確になりつつある。
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今後の研究の推進方策 |
2016年度は、デポジット制度の最近の学術研究の中で、ヨーロッパのデポジット制度の様々な特徴を位置付け、リユース・デポジット研究の今後の方向性を示す。デポジット制度と飲料容器税のポリシーミックスの特徴について、デポジット制度に関する最近の学術研究に照らし、学術的意義を明確にする。デンマークのデポジット制度を、リユース・リサイクル両方の観点から、他国のデポジット制度、および、デポジット制度の研究の文脈に位置付けつつ描ききる。一方、福島大学でこれまで複数年にわたって実施している、使用済み弁当容器の回収方策を整理し、各方策の有効性を回収率の観点から評価する。以上の研究に一定の目途を付けた上で、ノルウェー、スロベニアにおけるリユースの仕組みについてのフォローアップ調査、リトアニア・ラトビアにおけるデポジット制度のフォローアップ調査、中南米(メキシコなど)におけるリユース・デポジットの視察・訪問ヒアリング調査を見通す。
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次年度使用額が生じた理由 |
2015年度に実施した、スウェーデン、デンマークにおけるリユースの仕組みについてのフォローアップ調査は、研究代表者の福島大学での授業「特別演習Japan study program IV」の一環で学生の現地見学と連動して実施したため、本科研費からの支出を要しなかった。
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次年度使用額の使用計画 |
スウェーデンのリユースの仕組みについてのフォローアップ調査はさらに必要な状況であり、今後、その調査などに、2015年度に節約できた研究経費をあてる予定である。
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