研究課題/領域番号 |
15K16158
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研究機関 | 福島大学 |
研究代表者 |
沼田 大輔 福島大学, 経済経営学類, 准教授 (70451664)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | デポジット制度 / リユース / 回収 / 使用済み製品 / 廃棄物 / インセンティブ / 供給側 / 環境経済 |
研究実績の概要 |
2015年10月にイタリアで開催された国際学会で廃棄物管理政策についてのベスト論文賞を受賞した論文の要点を記したEditorialを、2016年6月にWaste Management Journal 第52巻の巻頭に掲載した。また、このベスト論文賞に伴い、2016年6月に福島大学学長学術研究表彰を受け、その表彰の記念講演をはじめ、福島大学内外で複数回、受賞論文の内容を含む自身の研究成果を発表した。この中で、自身の研究の社会的意義、今後の可能性などについて、様々な考察を重ね、自身の研究内容を見直すことができた。そして、これまでに行ってきた現地視察・ヒアリングをもとに、北欧における飲料容器への強制デポジット制度を例に、供給側のインセンティブを様々に明らかにし、それらをもとに経済学的な分析の方向性を示唆する英語論文の作成に尽力した。 さらに、研究代表者のゼミ、福島大学生協、福島大学当局等で協力し、福島大学における使用済み弁当容器の回収ボックスに新たな装飾を加えるなどした。そして、福島大学でのこれまでの複数年にわたる弁当容器回収の各方策の効果を、回収率の観点から実証的に検討し、2016年度の廃棄物資源循環学会研究発表会で報告した。また、様々な大学生協の弁当容器回収の方策についてアンケート調査を行い分析した論文を、Journal of Material Cycles and Waste Managementに刊行した。 以上のほかに、2017年9月発行予定の『環境経済・政策学事典』に、デポジット制度研究のこれまでとこれからを簡潔にまとめた原稿を作成した。また、2017年3月に京都大学で開催された、植田和弘教授の退職記念シンポジウムで、植田教授のデポジット制度に関する研究と、研究代表者のデポジット制度に関する研究の関係、および、今後のデポジット制度研究の方向性について講演した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究では、諸外国のデポジット制度の仕組みについて、世界レベルで共有できるようにし、それを踏まえた経済学的な分析の方向性を示すことを目的の一つとしている。これについては、「研究実績の概要」の欄に示した通り、様々な経過を経て、北欧における飲料容器への強制デポジット制度を例に、供給側のインセンティブを様々に明らかにし、経済学的な分析の方向性を示唆する英語論文を投稿する段階に到達している。また、福島大学を中心とした弁当容器回収についての様々な検討の中で、デポジット制度の仕組みをより具体的に把握することができ、これについても、学会報告・論文化の方向性を見通せている。 一方、あと一つの目的である、リユースを促進する方策、リユースを行うことを可能とする条件を導出することについては、自身の研究の社会的意義、今後の可能性などについて、様々な考察を重ねる中で、次の方向性を考えるに至っている。すなわち、これまでに行った海外調査のうち、カナダ・オンタリオ州、リトアニア、デンマークのリユースへの取組の調査結果などを振り返る。さらに、デンマークのリユースを企図したデポジット制度を政府の立場から、現地でのヒアリングも交えつつ深掘りする。 当初考えていた様々な国々の現地調査については、「次年度使用額が生じた理由」の欄に記したことのため、行えていない。しかしながら、2016年度に行った、自身の研究の社会的意義、今後の可能性などについての考察から、研究を店頭回収のあり方にシフトさせていく必要性を感じている。このため、当初考えていたノルウェー・スロベニア・ラトビア・中南米への調査については、本研究から優先順位を下げることを考えている。一方、リトアニア・エストニア・オーストラリア・台湾への調査については2017年度に、デンマークや島しょ国への調査を、研究期間を1年間延長して2018年度に行いたいと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
2017年度は、北欧のデポジット制度について、供給側のインセンティブに焦点をあてた論文を、海外の学術雑誌で公刊することを目指す。また、2016年度に、今後の福島大学におけるデポジット制度のあり方が大きな論点になったため、福島大学でこれまで約4年にわたって実施してきた、使用済み弁当容器の回収を企図したデポジット制度について、成果と課題を整理し、学会報告を行う。また、「研究業績の概要」の欄に示した植田和弘教授の退職記念シンポジウムでの講演内容をもとに、デポジット制度研究についての展望論文の寄稿の依頼を、『環境経済・政策研究』から受けており、本研究を十分に踏まえた論文として作成する。 一方、2014年に行ったリトアニア・エストニアにおけるデポジット制度の調査のフォローアップを2017年夏に行うことを考えている。新しく強制デポジット制度が開始されたと見られるリトアニア、リトアニアの強制デポジット制度導入の先例となったエストニアの強制デポジット制度について多角的な視点から深掘りし、これらの国々での強制デポジット制度の特徴を把握する。また、アジアのデポジット制度は、欧米のデポジット制度と異なり、生産者へのデポジット制度の様相が色濃いことがこれまでの研究で伺われており、その考察を深めるために、2017年夏に、台湾のデポジット制度の調査を考えている。さらに、2017年度末に、最近新しく強制デポジット制度を導入したとみられるオーストラリアの3つの州を訪問し、強制デポジット制度の導入直後であれば得られやすいと考えられる、強制デポジット制度の伝播、実施に至る政策形成過程についての情報収集を行いたいと考えている。そして、現地調査を行う国々同士を、これまでに見いだしてきた供給側のインセンティブなど様々な角度から比較し、店頭回収の研究への示唆を引き出す。
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次年度使用額が生じた理由 |
2016年度は、学長賞の受賞に伴う学内外の様々な講演・インタビュー、本務校の学生生活委員チーフとしての学務、子供の出生に伴う育児などで、様々な国々の現地調査を行うためのまとまった日程を確保できなかったため海外調査を行うことができなかった。
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次年度使用額の使用計画 |
「現在までの進捗状況」の欄にも示したとおり、本科研費の期間を1年間延長することを考えている。「今後の研究の推進方策」の欄に示した様々な海外調査等で、効果的に使用していく計画である。
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