研究課題
(1) 将来の作物収量分布の推計作物モデルを用い、将来の月別気候データ(気温、降水量など)から作物収量変化を計算し、これを用いて地域別、作物別に収量生起確率分布を得た。このとき、複数の要因による不確実性を考慮するため、複数の温室効果ガスの濃度パスの下での、複数の気候モデルにより推計された気候データを使用した。(2) 気候変動による低栄養と健康負荷の経済的含意将来の気候変化(気温上昇や降水量の変化)がもたらす低栄養に起因する健康負荷を経済的に評価した。今回の評価では次の2つの影響を取り上げた。第一に、医療サービス費用の増加と人の死亡によって失われる労働力がもたらす経済損失。第二に、失われる生命の経済的価値である。結果として、低栄養起因の死亡により失われる価値が相対的に大きいことを明らかにした。すなわち、i) 気候変化による低栄養起因の死亡・疾病がもたらす医療費と労働力の減少がもたらす影響は、地域的ばらつきがあるものの、微小(世界GDP比-0.1~0.0%, 2100年時点)である。それに対し、ii) 低栄養により失われる生命の経済的価値は2100年時点で世界全体では-0.4~0.0%、地域によって-4.0~0.0%のGDP損失に相当する。本研究は、初めて低栄養由来の健康リスクを経済的に評価した。この成果がまだ評価されていない影響の把握の第一歩となればと期待する。以上の内容を国際誌Climatic Changeにて発表した。
2: おおむね順調に進展している
当初の予定通り、将来の作物収量分布を推計することができた。さらに、気候変動による低栄養と健康負荷の経済的含意を明らかにし、論文にて発表することができた。
極端現象の影響評価(28年度)作物収量生起確率分布を将来のある年に与える。このとき、経済モデルで基準年から前年までを1年ステップで計算した後、対象年に収量生起確率分布を与える。これは、遠い将来においては、長期的なゆるやかな気候変化と短期的な変化の両方の影響をとらえる必要があるためである。収量生起確率分布を一般均衡モデル(CGEモデル)に与える際にはモンテカルロ法を用い、分布を再現する十分な回数の繰り返し計算を行う。食料消費と栄養不足人口の分布を出力として得る。さらに、食料備蓄、食料支援・貿易により食料を供給するメカニズムをCGEモデルに組み込み、これらによる影響軽減を想定したシミュレーションを行う。得られた分布を基に、どの生起確率の影響までに備えるためには、どの程度の備蓄量・支援量が必要かを算定する。
所属機関の他の研究費で外勤の旅費を支払うことができたため。
次年度の学会参加費に使用する予定。
他の12の海外のオンラインメディアで紹介された。
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Climatic Change
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