研究課題
本研究では世界を対象に21世紀前半に起こりうる極端現象(熱波や干ばつなど)による作物収量の低下が、食料消費カロリーと飢餓リスク(栄養不足)におよぼす影響を解明した。さらに、適応策の一つとして、影響の軽減に必要な食料備蓄を明らかにした。本研究では、作物モデルと応用一般均衡(CGE)モデルを用いたシナリオ分析を行った。将来の飢餓リスクに関する不確実性を考慮するため、複数の社会経済条件と気候条件、さらに、5つの気候モデル、20年間分の気候の年変動、作物モデルのパラメータの不確実性を考慮した将来の収量生起確率分布を作成し、CGEに与えた。また、異なる再現期間の極端現象による食料減少分を、極端現象下でのリスクを軽減するための必要な食料備蓄量を算出した。極端現象による飢餓リスクへの影響は将来の社会経済状況により大きく依存することが明らかとなった。すなわち、分断された社会を表すシナリオでは飢餓リスクは現在よりも増加し不確実なものとなるのに対し、なりゆきの社会を示すシナリオでは継続的に減少し、不確実性も小さくなった。これは、長期的な気候変化の影響だけではなく短期的な気候変動による影響も含むより大きな不確実性のもとでの意思決定を下すことが、政策決定者の課題となることを示している。また、100年に一度の極端現象下で必要な備蓄量を現在の備蓄と比較したところ、現在の世界の備蓄量は技術的に十分だが、極端気候条件かで必要とされうる地域では十分に備蓄されていないことが明らかとなった。現在の備蓄は半数が中国、次いで20%米国であるのに対し、極端現象下において必要とされる地域は南アジア、中国、その他アフリカである。これは、極端現象が発生した際に地域横断的な食糧支援や協力体制が飢餓リスクの軽減には重要であることを示唆している。以上の成果をまとめた論文は現在国際誌に投稿中である。
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すべて 雑誌論文 (8件) (うち国際共著 8件、 査読あり 8件、 オープンアクセス 8件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (7件) (うち国際学会 7件、 招待講演 1件) 備考 (4件)
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