研究課題
本研究は,ケア提供者(介護職員,看護師)が持続的に能力を発揮できる環境を実現するためにケア支援情報技術の開発・導入時の様々な課題を分析し,必要となる要件を明らかにすることを目的としたものであった.介護施設と大学病院を対象とし,調査と問題解決を兼ねた手法であるアクションリサーチにより実施した.作業の文脈依存性が高く,社会保険などの社会制度からの影響が大きいケアの現場では,単なる技術開発では現場に根ざした深い問題の解決は困難であると考え,ケア支援技術導入を行いながら調査を実施し,技術・運営・制度の関係性の中から重要な問題の特定を図った.介護施設では,特別養護老人ホーム1軒とグループホーム1軒に対して調査を実施し,情報共有システムが導入される際の課題についてまとめた.2施設の介護職員の精神的負担には共通して,「伝えたい情報が相手に正しく伝わらないこと」,「共有プロセスが中途半端になること」,「情報を受け取らないこと」,「共有機会が少ないこと」などの情報共有の問題点が影響していることが示唆された.岡山大学病院(慢性疼痛患者のリハビリ支援システム)を対象として実施した調査では,いつ・どこで発生するかわからないことや,痛みが増悪したことを他人に気付かれたくないこと,家庭でのシステム利用に際しては無理をしたりやる気が削がれたりすることが示唆された.宮崎大学医学部附属病院(電子クリニカルパス)を対象とした調査では,看護師に対しては業務時間の短縮,業務負担の軽減,患者への診療計画のしやすさ,医師からの指示のうけやすさに対して好影響を与えていた一方で,プロブレム発生時の情報共有に悪影響を与えている可能性が示唆された.
すべて 2018 2017 その他
すべて 国際共同研究 (1件) 学会発表 (6件) (うち国際学会 2件) 図書 (1件) 学会・シンポジウム開催 (1件)