全国の自治体が行っている公民連携(Public Private Partnership)事業のうち、子ども・子育て支援にかかわるものをピックアップした「公民連携型子育て支援事業データベース」の再整理と再分析を行った。公民連携による事業に着目したのは、人口減少社会における持続可能な公共サービスのありかたを検討するためである。 2013-2017年までの5年間に実施された公民連携事業のうち、子ども・子育て支援の全87事業をデータベース化した。公民連携の3類型をもとに分類したところ、子ども・子育て支援事業の「公共サービス型」11事業、「公共資産活用型」12事業、「規制・誘導型」64事業となった。各類型ごとに、子育て世帯の定住を促進する育児ネットワーク拡大への効果という観点から、サービス内容を比較検討した。 分析の結果は次の3点である。①全国自治体が行っている公民連携型子ども・子育て支援事業に「規制・誘導型」が多く、NPOや企業など民間が参入するためのルールづくりなど比較的やりやすい一面も見受けられる。②なかでも、保育料・医療費・給食の無償化・補助、子育て世帯の移住・同居・定住にともなう補助、不妊治療・出産祝い金の補助など、現金や現物給付型のサービスという特徴がある。③一方で、「公共サービス型」「公共資産活用型」では、育児ネットワークの拡大を主眼とした取り組みも散見される。 現金・現物給付型は、子育て世帯のライフイベントに応じたサービスであるため、一過性のものであり受給期間も限定される。自治体からすれば継続的な財源確保の課題もある。子育て世帯の流入と定住から考えると、現金給付型とネットワーク拡大型のどちらが効果的かという観点から検証し、事業の方向性を再検討する必要があることが明らかとなった。(育児休業により研究活動期間は2019年9月~2020年3月まで)
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