研究課題/領域番号 |
15K16181
|
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
山口 美輪 東京大学, 医学(系)研究科(研究院), 研究員 (20721674)
|
研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
キーワード | 食料品アクセス / 栄養素摂取量 / 高齢者 / 健康 |
研究実績の概要 |
国内で食料品アクセス状況と栄養素摂取量を詳細に見た調査はほとんど報告されていない。そこで、本年度は住民の買い物の苦労の有無と栄養素摂取量との関連を調べることを目的に自治体協力のもと調査を行った。我々は農村部の住民2,113名と、郊外の住民1,843名に対して買い物の苦労の有無や社会的、経済的背景を含めた食生活に関する郵送調査を行い、農村部から502名、郊外からは538名のデータ利用可能な回答を得た。また、農村部では食事摂取頻度調査票から1日の総エネルギー摂取量と栄養素摂取量の推定値を算出した。その結果、農村部の住民において買い物の苦労がある者とない者との間で男性においては1日の炭水化物エネルギー比、女性においては食物繊維量に有意な違いがみられた。また、農村部と郊外の住民とも買い物の苦労の有無と食生活との関連は、性、年齢で異なり、65歳未満は店の食料品の品ぞろえなどの質的な理由からくる買い物の苦労の割合が高く、65歳以上の特に女性においては身体的理由からくる買い物の苦労の割合が高かった。買い物の苦労と体格(肥満、やせ)や腹囲との有意な関連は男女ともすべての年代においてみられず、買い物の苦労が健康に与える影響については現時点の調査では明らかにならなかった。 今回の結果は対象地区や対象者の人数が限られたため、他の地区での調査や、調査対象者を増やして分析する必要がある。また、身体的理由から買い物の苦労が多かった高齢層について、買い物苦労の具体的な内容について調査する必要がある。 今後は地理情報システム(GIS)を利用した食料品アクセスマップを用いて物理的な住居から店舗までの距離を推定して主観的な買い物苦労と合わせた食習慣の違いについて分析する。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は農村部と郊外の住民において食料品アクセス状況と栄養素摂取量についての調査を行った。この調査から、性・年齢別に主観的な買い物の苦労の有無と栄養素摂取量との間に関連が見られた。初年度調査としておおむね順調と評価できる。
|
今後の研究の推進方策 |
今後は、地理情報システムなどによる物理的な食料品アクセス状況の調査を行い、買い物の苦労の有無によって購入食品(外食、惣菜、弁当、生鮮食品など)を含む食生活との関連をさらに詳しく分析する。本年度に行った農村部と郊外の住民の協力者の中から、買い物の苦労についてインタビューを行う質的研究のための調査も予定する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
本年度の残額は少なく、ほぼ予算内の研究費で調査を行うことができた。早急に購入すべき物品などが特にないので翌年度の予算として本年度の残額をまわすことにした。
|
次年度使用額の使用計画 |
次期調査のためのボイスレコーダーや大容量のメモリーを購入する。
|