平成30年度は、「(A)調査研究」としては、香川県・愛媛県において茅葺き技術・茅場・茅を利用する生活技術について現地調査を行った。「(B)プログラムの実践」としては、茅葺き施工のプログラムの実践を行った。 研究期間全体では、「(A)調査研究」としては、四国を中心に、茅を利用する生活技術や茅資源の定量的な把握を行った。特に、今後現代社会で茅の利用を継続する上での各地の課題整理を総合的に行うことができた点で意義が大きかった。それは、茅という資源の不足や、茅を扱う地域固有の技術の損失、担い手の不足等であり、特に、大量の茅を必要とする茅葺き屋根の維持管理に際し、各地でそれらの課題を抱えていることが分かった。本研究では、各地で個別の解決が試みられている実情を整理し、近隣県の協力によりそれらを補う仕組みを構築し、不足要素を補完し合うことによる継承の可能性を明らかにした。 その結果を踏まえ、担い手の育成も兼ねた「(B)プログラムの実践」としては、資源を利用する生活技術の習得希望者に対し、茅場の育成、茅刈り、乾燥、屋根葺きという一連の関連技術の習得プログラムを大学主催にて実施した。参加者へのアンケートの結果、技術的知識が十分得られなくても体験の面白さや交流に対する評価が高いことが分かった。また、関連技術にも続けて参加することで関心が広がる傾向が見られ、一連の作業を経験するプログラムの意義が確認された。茅葺きの施工という最も難易度が高いと思われたプログラムでも、簡易工作物に用いられた簡便な施工方法を採用したことで、短時間でのプログラムの実施が可能であることを実証できた。今後、持続可能な資源利用の普及を図る上で、汎用性の高い実践的研究になった。
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