研究課題/領域番号 |
15K16186
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研究機関 | 武庫川女子大学短期大学部 |
研究代表者 |
古濱 裕樹 武庫川女子大学短期大学部, 生活造形学科, 講師 (60449874)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 天然染料 / 色彩 / 染色 / 合成染料 / 草木染 / 繊維 / 色素 |
研究実績の概要 |
天然染料で染まる色彩について研究を進めた。具体的には、文献等から収集した、あるいは筆者の研究室で染めた天然染料染色物を分光測色計CM-2600dによって計測し、分光反射率およびCIELAB等色彩値を得た。その計測値を染料名・染色法・繊維種別等とともにデータベースに格納し、サンプル数の拡充を行った。天然染料で染まる色彩の特徴を見出すには、合成染料との比較が重要と考え、合成染料染色物もデータベースに含めた。このデータベースを活用すれば、「合成染料では染まるが天然染料では染まらない色を示す」、「キハダとウコンなど個々の天然染料の微妙な違いや複数の天然染料の混色で染まる色みを示す」、「目的の色を得るのに適した染料や染色法を検索する」など、従来は経験や勘に頼って行われてきたようなことが客観的データに基づいて可能となる。2016年4月時点のDB収録サンプル数は、天然染料で染められたもの9,081個、天然顔料で染められたもの101個、見た目は天然染料風だが実際に天然染料が使われているか不明なもの2,451個など、総数18,733個となっており、1年前と比較してほぼ倍増している。 上述のように筆者の研究室でも染色を行って染色物を作成しているが、その目的はデータベースを拡充するための染色物を獲得するためだけではなく、天然染料の染色性や堅牢性、環境負荷軽減などの検討も目的としている。平成27年度はデータベースの現状報告と共に、それら天然染料に関する種々の知見の報告を学会発表として行っている。 このデータベースは、まさに天然染料の色彩に関するビッグデータと言え、解析によって種々の興味深いことが明らかにできるため、現在も拡充と解析を続けている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
予定通り分光測色計CM-2600dを購入し、その後の半年間は最大限に活用してデータベースの拡充を続けている。具体的には、これまでの数年間に獲得した染色物(自らの研究室で染色したものも多く含む)を分光測色し、CIELAB値や分光反射率等をデータベースに収録していった。追加したデータ数はおおよそ1万サンプルほどで、天然染料と合成染料は半々程度の割合である。これらサンプルの測定とデータベースの機能強化を中心に進めてきたが、これは当初の計画通りである。
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今後の研究の推進方策 |
データベースの色彩値は、これまでは主にMicrosoft OfficeのExcelを用いて行ってきたが、3D散布図の必要性等から、より専門性の高いソフトウェアを用いた解析の必要性が生じてきた。今後は科学的グラフ作成ソフトや統計解析ソフトを用いる予定である。 染色物作成においては、天然染料に関するを情報検索を行い、より濃色に幅広い色が得られる手法について検討を進めていく。合成染料染色物の入手も継続して行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究課題において必要不可欠な物品である分光測色計CM-2600dが高額で、かつ応募の際に記載した金額から減額されて交付されることになったため、交付決定額と同額に近い支出となった。残金は僅かであったため、使える用途が限られ、CM-2600dのメンテナンス用の少額の物品を購入するにとどまり、残金が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
グラフ作成ソフト、統計解析ソフト、およびそれらのための計算処理能力の高いPC等の必要性が生じているため購入を検討する。染色物を作成するため、近年の天然染料の世界で多用される手法である染料微粉砕のためのビーズミルの購入も検討する。染色物や染料、繊維も購入する。
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