天然染料の色彩を客観データから定量的に捉え、合成染料の色彩との差異や天然染料の種類による色彩の違いなどを明らかにする研究である。この成果によって天然染料の現代的価値や使用する意義を明確にし、アパレル等企業や団体、個人レベルで日本発の優れた商品の開発や提案に供することができる。最終年度である平成28年度は、「①測色によるデータベースの拡充」、「②データベースを活用した天然染料と合成染料の色彩の区別」、「③天然染料の現代社会での価値の再考」、「④和服と天然染料の色彩の関係」などについて検討した。 ①本年度は市販の多数の合成染料染色物を購入し、測色をした。主なものとして京都の染色業者である山宗実業の「京の色3000色」とPANTONEの綿染色色票が挙げられる。データベースは項目を見直し、検索性を向上させた。また、染色物画像を撮影し、データベースに表示させられるよう現在も作業を続けている。 ②PANTONEの綿染色色票と天然染料の色彩を、全色票の色差計算から、天然染料で染まる色と染まらない色に仕分けした。本成果は6月の学会で発表し、その後論文を投稿すべく準備している。 ③天然染料の現代社会での価値を、日本の企業の天然染料に関する特許から考察した。それをもとに似た色の天然染料染色布、ハイブリッド(天然+合成)染料染色布、合成染料染色布を作成し、学生被験者の協力を得てどれが好まれるかを調査した。本研究は学生の卒論としてまとめた。 ④伝統的な現代和服の色彩を測色、あるいはCGソフトで抽出してまとめ、天然染料色彩データベースと比較した。伝統的な現代和服の色は天然染料の色彩は共通点もあるが、違いも多かった。本研究は学生の卒論としてまとめた。 これらの成果は学会の年次大会での発表の他に、奈良女子大学、神戸松蔭女子学院大学と本学の3大学協同プロジェクトである異分野交流会でも発表した。
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