研究課題/領域番号 |
15K16188
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
砂野 唯 名古屋大学, 生命農学研究科, 特任助教 (20748131)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 酒 / 発酵メカニズム / 食文化 / 食品栄養価 / アルコール耐性 |
研究実績の概要 |
本研究は、日々の生存と健康維持に必要とされる諸栄養をほぼ地酒のみから摂取する人びとを調査対象都市、醸造工程と栄養価、栄養事情を解明することである。 昨年度は、比較対象地としたネパールの①山岳部に暮らし日常的にモロコシ酒を作るグルン、②山間部で自給自足の暮らしを送るチェパン、③元は酒を日常的に作り飲酒していたがキリスト教の導入により飲酒文化が消えつつあるタルの人びとの酒作りと酒の位置づけに関して、現地調査を実施した。現地では、醸造工程と飲酒に関する聞き取りと参与観察、酒に関する分析を実施した。帰国後は、酒と材料に含まれる酵母・細菌類の同定、酒に含まれる栄養に関して調査した。 その結果、1)ネパールでは異なった地域でも、活用する酵母やカビの種類は限定されていることが判明した。さらに飲酒に関しては、2)ネパールでは宗教や祭礼と結びつくほどに酒は嗜好品や薬品としての度合いを強める傾向が見られ、それは都市部でより顕著である.一方、日常的な行為の際に飲酒する習慣をもつ地域においては酒は特別なものではなく栄養や水分を摂取するための飲み物や食事となることが明らかになった。この飲酒に関する現象は、酒を主食とするエチオピアやギニアの農村でも見られ、彼らの食習慣や生活習慣には共通点が見られた。 また、これらの調査結果をまとめ、和文論文・国際学会で発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
分析後のデータ解析が難航しており、成果をまめるまで至っていない。また、これまでの成果をまとめ英語論文を投稿したが、編集・査読機関とのやり取りがうまくいかず掲載まで進んでいない。 その一方で、比較調査地として選定したネパールにおける調査は概ね順調に進行しており、研究成果を国際学会で発表したところ、有益な助言を得ることが出来た。
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今後の研究の推進方策 |
昨年に引き続き、①酒の栄養学的な評価、②嗜好品となる酒・食事となる酒の醸造方法の差異に関する調査を継続する。さらに、③酒が食事となる環境・社会的要因に関しても調査を進める。これまでの研究結果から、引き続きエチオピアとギニアと、新たに発見した酒を食事とするネパール農村を主な調査対象とする。 今年度は主に文献調査と検体分析に重点を置き、必要であれば秋頃の現地調査を実施する。また、これまでの研究成果を論文にまとめることを目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
2015年度の調査により、調査地としているエチオピアとケニアを優先して調査するより、新規調査地であるネパールにおいて比較情報を収集する方が、データとの比較や醸造文化に関する広域での考察が可能となると判断し、ネパールの調査を優先して実施した。また、データの解析のために必要となった分析のうちの一部が、実験機器が高額であること、アシスタントの人件費が高額となることから、分析作業を外部へ委託した。そのため、予算と実際に使用した費用には違いが生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
英語論文の執筆を予定しているので、その翻訳代金・投稿費用として使用する。
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