研究課題
本研究において、紅麹から製造した新しい焼酎として紅麹焼酎を作製し、紅麹焼酎の香りプロファイルに貢献する揮発成分の同定を試みた。対照として白麹焼酎を作製し、官能評価およびガスクロマトグラフィー質量分析 (GC-MS) にて比較した。官能評価では紅麹焼酎は、チーズ、ミルキー、オイリー、そしてフルーティーといった特徴を示した。両焼酎より合計50成分がGC-MSとHPLCにより、同定および定量された。鍵香気成分の選抜は、白麹焼酎との比較と匂い活性値 (OAV) に基づいた。OAVとは化合物の濃度を匂い閾値で除した値であり、OAV>1はその化合物が香気に貢献することを意味する。これらの分析より、4つの高級アルコールと8つのエステル、4つのケトン、2つの短鎖酸を含む18の鍵香気成分が決定された。また紅麹と白麹を用いて味認識装置を用いた解析を行い、それぞれ苦味と酸味を特徴とすることを明らかにした。
2: おおむね順調に進展している
紅麹焼酎と白麹焼酎の比較により、紅麹焼酎の鍵香気成分の同定を行うことができた。すべての化合物について濃度を求め、それに基づき文献検索を繰り返して匂い閾値を調べるなど、時間を要する作業を今年度にすべて終えることができたことは大きい。
鍵香気成分がどのように生成されるかを明らかにするために、焼酎製造工程におけるすべての鍵香気成分の消長を調べていく。具体的には、もろみ発酵過程において毎日サンプリングを行い、GC-MSおよびHPLCを用いて鍵香気成分量の変化を観察する。また生成経路の予想できる化合物については、関連の酵素活性について紅麹および白麹を測定・比較を行い、メカニズムの解明を進める。また紅麹の苦味物質の同定を進めていくために、紅麹抽出物より単離精製を行っていく。
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