研究課題
前年に同定した紅麹焼酎に含まれる18の鍵香気成分について生成経路の確認を行った.本年は,紅麹焼酎のもろみの発酵期間にサンプリングを行い,経時的に鍵香気成分の消長を分析した.その結果,高級アルコールおよびエステル化合物は発酵に伴い生成されていること,ケトン類および単鎖酸は発酵中において大きな増減がないことが分かった.高級アルコールおよびエステル化合物は酵母がアミノ酸代謝に関連して生成する香気成分としてよく知られている.したがって,紅麹焼酎においてこれら化合物の含有量が高くなった理由として,紅麹のプロテアーゼ活性およびリパーゼ活性が影響していることが考えられた.両活性を白麹のそれと比較した結果,白麹よりも紅麹の方がプロテアーゼおよびリパーゼ活性が高く,もろみ中の遊離アミノ酸量および長鎖脂肪酸が高いことが明らかになった.また紅麹に多く含有されるエステル化合物は単鎖酸とエタノールまたは高級アルコールのエステルであることから,もろみ中の高い単鎖酸および高級アルコール濃度がこれらエステル化合物の生成に寄与したことを示すことができた.ケトン類および単鎖酸は,紅麹に由来する成分であることを明らかにすることができた.このような特徴は白麹に見られないものであり,紅麹の作製に用いられるMonascus 属菌の特徴であることが示唆された.紅麹焼酎の特徴香気成分とそれに寄与する紅麹およびMonascus属菌の役割を明らかにすることができた.
2: おおむね順調に進展している
紅麹焼酎の鍵香気成分の同定および生成に寄与する要因を明らかにすることができた。これらの結果は,まとめてすでに学術誌に投稿および受理された。紅麹の役割が明確になったことから,来年度に向けた明らかにするべき点も見えている。ただし今年度は,味物質について新たな知見を得ることができなかった。こちらは来年度に向けての課題としている。
紅麹はケトン類および単鎖酸の含有量が白麹と比較して高いことが明らかになった.この理由として,中鎖脂肪酸がβ酸化され,さらにβ-ケト酸脱炭酸酵素によってケトン類となることが明らかになっている.これらの酵素が,紅麹の高いケトン含量に寄与しているかについて,欠損株などの変異体の作製により明らかにしていく.紅麹の変異株の作製は,多くの報告がないため,来年度の初めに変異体取得の方法を確立する.また紅麹の苦味物質の同定を進めていくために、紅麹抽出物より単離精製を行っていく.
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すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (18件) (うち国際学会 2件、 招待講演 4件) 図書 (1件)
Food chemistry
巻: 224 ページ: 398-406
PeerJ
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DOI 10.7717/peerj.1853
Journal of the Institute of Brewing
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