研究課題
前年までに紅麹焼酎の特徴香気成分とそれに寄与する紅麹およびMonascus属菌の役割を明らかにすることができた。しかしながら、紅麹焼酎製造時にもろみの発酵速度が遅いこと、もろみに含まれる麹粒が硬いことが原因で発酵歩合および蒸留歩合が低く、焼酎製造に応用することが困難であることが判明した。そこで本年度では、紅麹焼酎の製造を可能とするために、酵素製剤を用いた製造方法の確立を試みた。α-アミラーゼ酵素製剤1種、グルコアミラーゼ酵素製剤1種、プロテアーゼ酵素製剤12種、細胞壁分解酵素製剤30種を用いて紅麹焼酎もろみに各酵素製剤の添加試験を行った。酵素製剤を添加したもろみのほぼすべてにおいて、もろみ中の麹粒が柔らかくなり、アルコール発酵の促進が認められた。プロテアーゼ酵素製剤よりニューラーゼF3G、細胞壁分解酵素製剤よりスミチームTGがアルコール発酵と麹粒の溶解性において共に高い能力を示したことから、これら2つの選抜酵素製剤とα-アミラーゼ酵素製剤であるスミチームAS、グルコアミラーゼ酵素製剤であるスミチーム焼酎を用いて紅麹焼酎の小仕込み試験を行った。その結果、酵素製剤を添加したすべてのもろみにおいてもろみアルコール度数が上昇し、蒸留歩合が高くなった。また官能評価よりスミチームTGを用いた焼酎において対照である酵素製剤無添加の紅麹焼酎と最も類似していることが明らかになった。これらの結果より、紅麹焼酎もろみへ酵素製剤を添加することで、酒質に大きな影響を与えることなく、もろみ中の麹粒の溶解やアルコール発酵を促進でき、さらに蒸留歩合を改善することでアルコール収得量を増加させることができた。
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