研究課題/領域番号 |
15K16191
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研究機関 | 宮城大学 |
研究代表者 |
君塚 道史 宮城大学, 食産業学群(部), 准教授 (90553446)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 氷結晶 |
研究実績の概要 |
氷の再結晶化抑制は冷凍保存された食品の品質を保持する上で重要な課題である。したがって、食材の違いや増粘剤をはじめとする添加物の影響など、これまでにも様々な側面から研究が成されてきた。しかしながら、水に存在する溶質や縣濁物の種類、濃縮相の状態や濃度分布がおよぼす影響など、未だ不明な点も多い。そこで本研究ではこれらを明らかにし、新たな解決手段を提案する事を最終的な目標としている。尚、H28年度までの研究実績の概要としては、①特定のシリカ粒子やセルロース繊維を縣濁させると、再結晶化速度は低下する事。②縣濁物による再結晶化速度の低下はキサンタンガムやローカストビーンガムを同量添加した場合と比べて大きい事。③再結晶化速度定数のアレニウスプロットは糖水溶液単独の場合も含め、縣濁物を添加した場合でも-10~-30℃の範囲で単一な直線となるが、その活性化エネルギーは縣濁物により異なる事などがわかっている。そこでH29年度は縣濁物添加による再結晶化抑制の要因を明らかにする為、-10℃よりも高温域で再結晶化の速度定数を求め、その温度依存性について検討した。また、顕微鏡による観察のみならず、これと同様の温度履歴で熱分析を行い、残存している氷結晶の量についても測定を行った。その結果、①再結晶化が確認できる温度の上限は縣濁物の有無に関わらず-4℃であった。②再結晶化速度定数のアレニウスプロット(-4℃~-10℃)は特定の温度(-6または-8℃)から単一な直線とはならず、その温度は縣濁物の有無および種類により異なった。③-4℃で保持した際の氷結晶量(DSC測定)の測定から、添加により氷結晶の融解を促進する縣濁物ほど再結晶化を抑制している傾向にある事がわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
-4~-10℃における再結晶化速度定数の温度依存性と熱分析による氷結晶量の測定から、再結晶化を抑制する縣濁物は保存時に氷結晶の融解を促進している事が示唆された。しかしながら、これと平行して検討予定であった凍結濃縮相の状態観察および濃度分布を計測するまでには至っていない。よって、研究全体の進捗状況としてはやや遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
クロース水溶液および微粒子(シリカ、セルロース)を添加したスクロース水溶液等を用い、今年度と同様の温度履歴で生じた濃縮相の状態および濃度分布について観察する。これにより、縣濁物が再結晶化を抑制する要因について、その詳細を直接的に明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度の実験から得られた結果は当初の想定と比べ学術的に興味深い内容である為、より精緻に評価する必要がある。具体的には微粒子(シリカ、セルロース)を添加した糖水溶液を用い、種々の冷却履歴で生じた濃縮相の状態や濃度分布について観察する。
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