研究課題
氷の再結晶化抑制は冷凍保存された食品の品質を保持する上で重要な課題である。したがって、食材の違いや増粘剤をはじめとする添加物の影響など、様々な側面から研究が成されてきた。しかしながら、水に存在する溶質や縣濁物の種類、濃縮相の状態がおよぼす影響など、未だ不明な点も多い。そこで本研究ではこれらを明らかにし、新たな解決手段を提案する事を最終的な目標としている。H29年度までの研究実績の概要としては、①特定のシリカ粒子やセルロース繊維を縣濁させると再結晶化速度は低下する事。②縣濁物による再結晶化速度の低下はキサンタンガムやローカストビーンガムを同量添加した場合と比べて大きい事。③再結晶化が確認される上限温度は縣濁物の有無に関わらずスクロース溶液であれば-4℃、グルコース溶液では-3℃付近である事。④再結晶化速度定数のアレニウスプロットは何れの場合も-10~-30℃の範囲で単一な直線となるが、スクロース溶液では-8℃、グルコース溶液では-4℃付近から単一でなくなる事。また、その活性化エネルギーは縣濁物により異なる事が明らかとなっている。そこで、H30年度はこれら現象の要因を明らかにする為、特に-3から-10℃の各温度帯で再結晶化を促進(60分間保持)した後の氷結晶量(融解潜熱量)を熱分析にて測定した。その結果、前年度まで結果と同様に、①スクロース溶液は-3.0℃からグルコース溶液は-2.5℃から融解潜熱は測定されなかった。また、②-4.5℃より低温で保持した場合は縣濁物の有無を問わず融解潜熱量に差は無いが、-4.0℃より高温では融解潜熱量の保持温度依存性熱量はスクロース水溶液(縣濁物なし)<ナノセルロース繊維<シリカ粒子の順となり、再結晶化速度定数の保持温度依存性と類似の傾向を示した。以上の結果から間接的ではあるが氷結晶の残存を促す縣濁物ほど再結晶化を抑制していることが示唆された。
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Transactions of the Japan Society of Refrigerating and Air Conditioning Engineers
巻: 35 ページ: 269-276