研究実績の概要 |
報告者は、これまでの研究によって得た培養細胞によるアッセイ技術、および構造と機能の関係性や苦味受容体の抑制効果の知見を活かし、より効率的な苦味受容体アッセイ系(苦味センサー)の開発を計画した。これまでに、新たに報告されたアッセイ系[Inoue et al., Nat. Methods (2012), 9, 1021-1029]を苦味受容体に適応し、プレートリーダーのような汎用性の高い機器で測定可能な、有用性が高い苦味センサーの構築に成功しつつあるが[H25-26 若手B, 課題番号25750028]、その応答は未だ微弱である。そこで以下の3つのステップを経て改良を加え、ハイスループットスクリーニングに耐えうる高性能な苦味センサーの構築を目指した。 ステップ1: hTAS2R16およびhTAS2R38にマッチした効率の良いアッセイ系に最適化する。ステップ2: 構築したアッセイ系に酸性物質を適用し、抑制試験を行う。ステップ3: 構築したアッセイ系で、25種すべての苦味受容体のリガンド応答性を検討する。 平成27年度はこのうち、ステップ1について検討を行った。まず、受容体とその下流のシグナル伝達因子のうち、どちらがボトルネックとなっているかを確かめるために、シグナル伝達因子の一つGタンパク質のポジティブコントロールの投与を試みた。その結果、やはり本アッセイ系は微弱な応答しか示さなかったことから、苦味受容体ではなく、Gタンパク質以降のシグナル伝達系が、十分機能していないことが示唆された。そこで、一過的な遺伝子導入では、Gタンパク質が十分機能しないと考えられることから、Gタンパク質の安定発現株構築を試みた。その結果、安定発現株候補を17クローン作製した。
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