本研究は、水産練り製品の主原料である冷凍すり身が保存または輸送時の予期せぬ温度上昇によって解凍され、再び凍結される再凍結された際の、ゲル形成能劣化機構および再凍結された冷凍すり身の有効利用について検討したものである。 平成27年度から平成28年度の研究成果として、再凍結された冷凍すり身は坐りゲルの形成能劣化が確認された一方で、坐りを経ない直加熱ゲルの形成能は大きく低下しなかった。これはミオシン頭部が再凍結により変性を受けたことによって、坐りによるミオシン重鎖の多量化が抑制されたものと考えられた。また、再凍結された冷凍すり身から調製したゲルのタンパク質の結合種の割合を確認したところ、再凍結された冷凍すり身ではS-S結合よりも強固な結合の割合が減少しており、これはミオシン重鎖の多量化が抑制されたことに起因していると思われた。本研究は冷凍すり身の3つの等級(計5ブランド)で行い、概ね全ての等級で上記の現象が確認された。また、再凍結された冷凍すり身のゲル形成能の改善策としてデンプンあるいは卵白の添加を試みたところ、デンプンでは破断強度のみの改善にとどまったが、卵白では破断強度と破断凹み両方の改善が確認された。 平成28年度から29年度にかけて、マルトトリオースの結晶化に関する基礎研究とその応用研究としてマルトトリオースを冷凍すり身に添加した際の凍結保護効果について検討した。その結果、マルトトリオースの結晶化には至らず、マルトトリオースの結晶化については、今後さらなる検討が必要となった。一方で、冷凍すり身に添加した際の凍結保護効果については、ソルビトールとほぼ同様の効果を有し、より甘味の少ない冷凍すり身の製造が可能となることが示唆された。しかし、コスト的な問題から現状は冷凍すり身に添加するよりも酵素製剤等の凍結保護材としての使用が有効と考えられた。
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