研究実績の概要 |
カルボニル基とアミノ基との間の非酵素的褐変反応をメイラード反応と呼ばれている。食品はカルボニルおよびアミノ化合物を豊富に含むため、食品の調理および貯蔵の過程でこの反応が起こることが知られているが、非常に複雑な反応であるため、どのような反応生成物がどの程度食品に蓄積されているか、また調理加工によって生成量に変化があるかなどの知見が乏しいのが現状である。本研究では、これまでにあまり解析がなされていない極性物質にターゲットを絞って、①新規メイラード反応生成物の探索と同定、②簡便で正確な定量方法の開発と食品試料への適用の2つのテーマを軸にして研究を展開する。 平成27年度は最終糖化生成物であるAGEs7種の定量方法を構築し、褐変食品への適用を試みた。飲食品から摂取する外因性AGEsが内因性AGEsと同様に生体に悪影響を及ぼす可能性が指摘されていることから、食品中に含まれるAGEs量を正確に把握する必要がある。分析装置にLCMS-8030(SHIMADZU社製)、分離カラムにIntrada Amino Acid(Imtakt社製)を用いて高感度で簡便な定量方法を確立した。本法を用いて様々な醤油やビール系飲料に含まれる遊離AGEsを分析したところ、醤油中にはCML, CEL, MG-H1, GOLD, MOLDが検出され、ビール中にはCML, CEL, MG-H1が検出された。また、醤油を37℃で1~4ヶ月間貯蔵すると貯蔵期間中にCML量が顕著に増加した一方で、90℃で3時間加熱するとMG-H1量の増加が確認された。原材料・製造方法や貯蔵・加工条件によって形成するAGEsに違いが見られたことから、食品の品質評価に応用できる可能性が示された。
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