研究実績の概要 |
食品の加工・調理に伴う代表的な成分間反応としてメイラード反応がある。メイラード反応生成物の化学的解明を目指した研究はこれまで主に低~中極性物質に絞って行われてきた。本研究ではこれまでに研究実績が少ない高極性物質に着目し、これら反応生成物を分子レベルで明らかにするとともに、加工食品中の挙動に関する基礎的な知見を得ることを目的として、1) 簡便で性格な終末糖化産物AGEsの定量法の開発と食品試料への適用、2) 新奇メイラード反応生成物の探索と同定という2つのテーマを軸にして研究を進めている。 1)のテーマにて、本年度は固体食品であるパンのAGEs定量法について検討した。脂質除去後のタンパク質画分に対して酸加水分解処理を行い、LC-MS/MSにて定量を行った。パン中には3種のAGEs(CML, CEL, MG-H1)が検出され、加熱条件や原材料の違いがAGEsの種類・量に影響することが示された。よって、適切な加工条件や食品成分の添加によって含有されるAGEsの質・量をコントロールできる可能性が示唆された。 2)のテーマにて、畜肉中に多く含まれるイミダゾールジペプチドのカルノシンとキシロースとのメイラード反応から形成される生成物を見出し、本化合物の単離・構造解析を行った結果、ピロリルメチリデンピロロン構造を有する新奇黄色色素を同定した。本化合物の生成条件と生理活性について検討したところ、弱酸性条件下で特異的に形成し、高い抗酸化活性を示すことを明らかにした。
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