天ぷらのおいしさを油面の様子から評価するために、これまで天ぷらの揚げ過程における水分挙動が出来上がりに与える影響について、澱粉性食品であるさつまいもを用いて調べてきた。平成27年度は重水を用いた衣と素材の水分挙動を調べる方法を確立し、平成28年度は水分挙動を調べるための実験を繰り返し行い、衣と素材の水分の動きを推定した。平成29年度は揚げ過程における素材の品質の変化を調べ、衣と素材の水分挙動が天ぷらの出来上がりに与える影響について考察し、油面の様子から出来上がりを評価する方法を検討した。 試料はさつまいもを用いた。さつまいもの水分のばらつきを少なくするためにさつまいもの大きさは直径40mm、厚さ8mmに揃えた。衣(薄力粉:卵水=30:50g)をつけ、油(160,180,200℃)で4分加熱した。揚げ過程における衣と素材の品質の変化は、衣は水分量と気泡数から、さつまいもは水分量と硬さ、糊化度から調べた。水分量は常圧乾燥法(105℃)により、気泡数は破断応力波形を微分波形へ変換した時のマイナスピーク数より、硬さは破断応力より、糊化度はグルコアミラーゼ法と走査電子顕微鏡による組織観察より行った。 衣の水分は揚げ直後に多く蒸発し、油の温度が高いほど蒸発量が多く、気泡数も多かったことから、衣のサクサク感は揚げ直後の水分蒸発の状態により評価できる。 素材の水分は油の温度が高いほど時間経過とともに少なく、硬さは硬く、糊化度は低くなった。平成28年度の結果より、揚げ直後に衣から素材へ水分が移動し、それが素材中の水分保持を助けていることがわかった。このことから油の温度が高い方が衣から素材へ移動した水分が素材中で保持される時間が短くなり、澱粉が十分に糊化されないと予想した。澱粉性食品の天ぷらは揚げ直後以降の水分蒸発が出来上がりに影響を及ぼすことから、揚げ直後以降の水分蒸発の状況により評価できる。
|