研究課題/領域番号 |
15K16200
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
鶴田 剛司 岡山大学, その他の研究科, 准教授 (90728411)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | プロバイオティクス / Exosome / 脂肪蓄積 / マクロファージ |
研究実績の概要 |
本研究は、プロバイオティクスの刺激情報を伝達する分子として貪食細胞が分泌した膜小胞(Exosome)に着目し、プロバイオティクスの健康効果をこのExosomeが媒介していることを証明することである。申請者は、プロバイオティクスの健康効果の一つとして報告されているLactobacillus plantarum Lp14株(Lp14)の脂肪蓄積抑制効果をExosomeが媒介しているかを検証した。Lp14を貪食させたマウス骨髄由来のマクロファージよりExosomeを回収した。マウス脂肪細胞株3T3L1細胞に回収したExosomeを添加し、脂肪蓄積量および脂肪蓄積に関わる遺伝子発現を網羅的に評価した結果、Lp14株を貪食したマクロファージが分泌したExosomeは3T3L1細胞の脂肪蓄積を抑制するとともに、脂肪蓄積に関係する遺伝子であるC/EBPβ、KLF5、AGPAT2、NOC、PLIN1、SENP2の遺伝子発現を抑制した。この結果から脂肪蓄積抑制効果が報告されているLp14を貪食したマクロファージが分泌したExosomeは脂肪細胞分化の制御および脂肪酸燃焼に関わる転写因子C/EBPβやKLF5、脂肪蓄積に重要な働きを果たしているAGPAT2、PLIN1、SENP2の発現を抑制することで3T3L1細胞の脂肪蓄積を抑制することが示唆された。本研究結果はプロバイオティクスの脂肪蓄積抑制効果を主要な貪食細胞であるマクロファージが分泌したExosomeが媒介していることを強く示唆する結果であり、これまで不明であった腸管から離れた組織にプロバイオティクスの刺激を伝達する機序を解明する端緒となる可能性がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年5月に北海道大学農学研究院から岡山大学環境生命科学研究科に所属先が変わったため、研究環境を整えるために時間を要したが、おおむね当該研究は順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
本研究からプロバイオティック乳酸菌が腸管から離れた組織において健康機能を発揮する機序としてマクロファージがプロバイオティック乳酸菌を貪食した際に産生するExosomeが媒介している可能性を示すことができた。今後は脂肪蓄積抑制作用に寄与しているExosome内の活性分子としてmiRNAに着目し、その発現解析を実施する。また、本実験でみられた現象がLp14以外のプロバイオティック乳酸菌株でも共通して起こる現象であるかを検証し、腸管以外の組織で効果的に作用しうるプロバイオティック乳酸菌株のスクリーニング法の標的としてプロバイオティック乳酸菌を貪食したマクロファージが産生したExosomeが有効であるかを検証する。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成28年度にExosome中のmiRNA解析を予定しており、これらにかかる解析費用を捻出することが一つの理由である。もう一つの理由は、本年度に学会発表および論文発表を集中的に行うことを予定しており、これらの費用を捻出するためである。
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次年度使用額の使用計画 |
miRNA解析用の試薬および学会発表時の旅費、論文発表時の英文校閲、投稿料として使用する予定である。
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