本研究では、L. plantarum No.14株の抗肥満効果を媒介する因子としてNo.14株を貪食したマクロファージが分泌する細胞外小胞(No.14 EV)に着目し、その役割を検証した。No.14 EVは脂肪細胞株、骨格筋細胞株、肝細胞株に取り込まれ、その取り込み量は経時的・濃度依存的に増加することが明らかとなった。取り込まれたEVの作用を検証するために、まず、脂肪細胞の脂肪蓄積への影響を評価した。その結果、No.14 EVは脂肪細胞の分化および脂肪蓄積の重要な転写因子であるKLF5の遺伝子発現を抑制することでその下流の各遺伝子発現を抑制し、脂肪蓄積を抑制していることが示唆された。次に、脂肪細胞・骨格筋細胞の糖取り込みへの影響を評価したところ、脂肪細胞でのみ糖取り込みの抑制がみられ、骨格筋細胞の糖取り込みには影響を及ぼさないことが明らかとなった。このことから、No.14 EVの作用は細胞種選択的であり、特に脂肪細胞に作用することが示唆された。以上の結果は、乳酸菌を貪食したマクロファージが分泌したEVが細胞種選択的に脂肪細胞に乳酸菌刺激を伝達することを示唆するものであり、これまでにない新たな知見である。腸管で作用するプロバイオティック乳酸菌が脂肪組織や皮膚など全身の組織に作用するメカニズムはこれまで明らかではなかったが、本知見はこれを明らかにするための端緒となると考えられる。 EV内のテトラスパニンをはじめとするタンパク質構成はNo.14株の刺激によって変化していた。このことからマクロファージから分泌されるEVそのものが乳酸菌刺激によって変化することが示唆された。現在、EV内のタンパク質構成の変化がEVの抗肥満効果に関係しているかを検証中であるが、これを証明することができれば、EV内のタンパク質を指標とした抗肥満効果をもつ乳酸菌の選抜方法を提言することができる。
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