研究実績の概要 |
本研究の目的は、日本食が健康寿命の延伸に寄与しうるメカニズムを解明するとともに、健康寿命の延伸にむけた日本食の改善点を検証することである。2016年度には主に下記の2つを実施した。 1)要介護発生の主要な原因疾患である認知症に着目し、食事パターンと認知症発生との関連を前向きコホート研究である「大崎コホート2006研究」のデータ(14,402人)で検討した。食事パターンの抽出は、先行研究に準じて、因子分析とインデックス法(日本食インデックススコア)の2種類を採用し、これにより各食事パターンの度合いを点数化して、認知症発生との関連を検討した。その結果、日本食パターンの度合いが高い高齢者では有意に認知症発生リスクが低くなっていた。このことから、日本食が健康寿命延伸に寄与しうるメカニズムとして、認知症リスク低下が一因となる可能性が示唆された。 2)日本食が健康的である一因として各種栄養素摂取が適度になりやすいことが挙げられているが、研究は十分でない。そこで、日本食インデックススコアが高くなるほど栄養バランスが良くなるかを、「鶴ヶ谷プロジェクト」のデータ(1,127人)で検討した。栄養バランス得点として、11項目の栄養成分の「日本人の食事摂取基準」に対する遵守度を算出した。さらに、回帰モデルによって改良版日本食インデックススコアを開発した。その結果、日本食インデックススコアは栄養バランス得点と有意な相関関係があった。各栄養成分については、ナトリウムを除く全項目で正の相関(良好な傾向)であった。なお改良版日本食インデックススコアの方が栄養バランス得点との相関が強かったが、ナトリウムとの相関関係は同様であった。以上から、日本食の度合いが高いほど栄養バランスが良好であったが、ナトリウム摂取量が高くなりやすいという課題も示唆された。
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