研究課題/領域番号 |
15K16202
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研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
谷 真理子 東京医科歯科大学, 医歯(薬)学総合研究科, 准教授 (90452028)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 酸化コレステロール / 血管炎症 |
研究実績の概要 |
加工品を頻食する食習慣に伴い、動物性加工食品に含まれる酸化コレステロールの摂取量が増加している。小腸から吸収された酸化コレステロールは、HDLの機能不全や血管炎症を引き起こし、動脈硬化の進展リスクを高める可能性が考えられる。今年度は、酸化コレステロール負荷によって、動脈硬化進展に重要な血管炎症が生じるかどうか検討を行った。 C57BL/6Jマウスに、高脂肪食とともに経口ゾンデで酸化コレステロールを、対照群には通常のコレステロールを4週間摂取させた。その後、麻酔下でマウス大腿動脈を用いた生体内血管観察システムにより、血管内皮への白血球接着現象をリアルタイムで観察し、ライブイメージを動画に取り込み、画像解析することで、血管内皮に接着する白血球数を算出した。高脂肪食負荷によって、血管内皮への白血球接着は増加したものの、コレステロール群と酸化コレステロール群で有意な差は認められなかった。 一方、食品中に多く含まれることが知られている酸化コレステロールの一種である7-ケトコレステロールを、ヒト臍帯静脈血管内皮細胞(HUVEC)に添加し、ヒト単球系細胞THP-1を用いた接着実験を行ったところ、コレステロール刺激に比して有意な接着亢進作用が認められた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
今年度は、まず酸化コレステロール負荷によって、動脈硬化進展に重要な血管炎症が生じるかどうか検討した。マウスを用いた酸化コレステロール負荷実験では、当初の予想に反して、白血球の血管内皮への接着現象は見られなかった。体重、肝重量においても、コレステロール群、酸化コレステロール群ともに有意な差は見られなかった。リンパから静脈への合流付近に脂肪塊生成の所見があり、今回負荷した脂肪量が過剰であることと、酸化コレステロールの吸収率が非常に低い可能性が考えられた。投与量や負荷期間などの条件を再検討する必要がある。 次に、培養細胞を用いた系で、酸化コレステロールの血管炎症惹起作用について検討した。食品中に多く含まれることが知られている酸化コレステロールの一種である7-ケトコレステロールを、ヒト臍帯静脈血管内皮細胞(HUVEC)に添加し、ヒト単球系細胞THP-1を用いた接着実験を行ったところ、コレステロール刺激に比して有意な接着亢進作用が認められた。7-ケトコレステロールの血管炎症惹起作用の機序について、現在解明中である。
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今後の研究の推進方策 |
マウスを用いた実験では、酸化コレステロールの吸収率が極めて低いことから、当初の予想に反した結果となった。一方で、培養細胞を用いた系では、酸化コレステロールの一種である7-ケトコレステロールが、コレステロールよりも有意に血管炎症を惹起する可能性を示唆するデータを得ている。今後は、In vitroの系を用いて、酸化コレステロールが単球の血管内皮細胞への接着を増加させるシグナル経路の解明を検討する予定である。
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