加工品を頻食する食習慣に伴い、動物性加工食品に含まれる酸化コレステロールの摂取量が増加している。アテローム性動脈硬化巣において、食事由来の酸化コレステロールが多く検出されていることが明らかとなってきた。昨年度は、食事由来の酸化コレステロールの一種である7-ケトコレステロールに着目し、培養細胞を用いた系で動脈硬化の初期段階である血管炎症惹起作用について検討を行った。食品中に多く含まれることが知られている酸化コレステロールの一種である7-ケトコレステロールを、ヒト臍帯静脈血管内皮細胞(HUVEC)に添加し、ヒト単球系細胞THP-1を用いた接着実験を行ったところ、コレステロール刺激に比して有意な接着亢進作用が認められた。また、より生理的な血流条件に近いモデルとして、定常層流(1dyn/cm2)存在下における生理的細胞接着実験においても、7-ケトコレステロールを刺激したHUVECでは白血球の接着が亢進していた。HUVECにおける細胞接着分子の発現(E-selectin、ICAM-1、VCAM-1)は、コレステロール添加では変化が認められなかったが、7-ケトコレステロール添加によって増加した。特に、E-selectinの発現が顕著に増加していた。さらに今年度は、細胞接着分子の発現上昇機序を検討するため、MAPキナーゼの活性化をウエスタンブロット法で確認したところと、JNKの活性には変化は認められなかったが、p38MAPKのリン酸化が7-ketocholesterol添加によって亢進していた。p38MAPK阻害剤(SB203580)を用いて同様の接着実験を行ったところ、7-ketocholesterolによる接着亢進作用は阻害され、接着分子の発現も抑制された。
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