小腸の消化吸収関連遺伝子は,陰窩の未分化な増殖細胞が吸収上皮細胞へと分化しながら絨毛へ移動する過程で発現し,流入する栄養素や食品成分の消化吸収に対応する。小腸上部への単糖流入の調節を介して小腸の吸収機能を制御することは,脂肪肝,糖尿病,肥満などの生活習慣病の予防に重要である。そこで,食餌中の糖質の質を変えることにより,げっ歯類小腸上部(空腸)におけるα‐グルコシダーゼならびに糖輸送体に及ぼす影響を検討した。 (1)マルトースとトレハロースとの比較検討 ラット空腸のα‐グルコシダーゼであるスクラーゼ活性,マルターゼ活性およびトレハラーゼ活性は,低マルトース食と低トレハロース食を摂取させた群の間で有意な変動を示さなかった。また,ラット空腸のスクラーゼ活性,マルターゼ活性ならびにトレハラーゼ活性は,高マルトース食と高トレハロース食を摂取させた群の間で有意な変動を示さなかった。 (2)グルコースとフルクトースとの比較検討 高グルコース食と比較し,高フルクトース食を摂取させたラットでは,肝臓にトリアシルグリセロールが顕著に蓄積し,さらに空腸では,管腔側に発現するナトリウム‐グルコース共輸送体Sglt1ならびに基底膜側に発現するグルコース輸送体Glut2ではなく,管腔側に発現するフルクトース輸送体Glut5のmRNAレベルが選択的かつ有意に増加した。一方,糖応答転写因子THRSPおよびChREBPのmRNAレベルは,高グルコース食と高フルクトース食を摂取させた群の間で有意な変動を示さなかった。
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