小腸から吸収された単糖(グルコースおよびフルクトース)は門脈を介して肝臓に到達し代謝される。肝臓においてフルクトースは解糖系をバイパスしグルコースよりも急速に脂肪合成に利用されるため,過剰なフルクトースの摂取は脂肪肝を発症・促進する。また,肝臓における転写因子THRSPは脂肪合成と同調してその発現量が変動することが報告されている。そこで,糖質源をグルコースあるいはフルクトースとした食餌をラットに摂取させることにより,高フルクトース食が肝臓の脂質蓄積,脂質代謝系酵素ならびにTHRSPを含めた脂肪合成に関与する転写因子に及ぼす影響を検討した。 (1)フルクトース摂取と肝臓脂肪蓄積の関連性;高グルコース食を摂取させた群と比較し高フルクトース食を摂取させた群では,肝臓トリグリセリド濃度が有意に増加,肝臓コレステロール濃度は増加傾向を示した。 (2)フルクトースと脂質代謝酵素の関連性;高グルコース食を摂取させた群と比較し高フルクトース食を摂取させた群では,肝臓の脂肪酸合成系の遺伝子発現(PKLR,ACACA,FASNなど)およびタンパク質発現(PKLR,FASN)が有意に上昇した。一方,脂肪酸β酸化系酵素(CPT1a,ACO)の遺伝子発現には変化がなかった。 (3)フルクトースと脂肪合成に関与する転写因子の関連性;高グルコース食を摂取させた群と比較し高フルクトース食を摂取させた群では,肝臓のTHRSPおよびChREBPの遺伝子発現は有意に上昇した。一方,SREBP1cの遺伝子発現には変化がなかった。
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