現在多くの施設において栄養評価・患者評価のひとつとして体組成計が用いられている。しかし、循環動態・呼吸動態の変動の著しい患者においてどこまで有効かは定かではない。本年度は、昨年度に引き続きICU入室患者の体組成をBIA法にもとづき測定し、その有効性を評価した。中でも、特に位相角は細胞糖化性の指標として予後との関連が注目されている。我々の検討では、位相角は在室日数、人工呼吸離脱日数と有意な相関関係を示した。一方で重症度の指標であるAPACHEIIや炎症指標であるSRPとの関連は認められなかった。本年度症例数を増やして検討した結果、これらは有意差をもって明らかとなった。また、敗血症症例で位相角が低いこと、入室時位相角が低値の患者で30日死亡率が高いことも明らかとなった。 また、経腸栄養介入を24時間以内に開始できた群とそうでない群で体組成の変化を比較した。我々はこれまでに重症患者では下肢のみでなく上肢の筋肉も顕著に減少すること、また細胞外水分率の早期改善が予後に有効であることを報告しているが、体組成測定のうち、除脂肪体重と位相角は、栄養を早期より介入できた群で有意に維持、改善し、また細胞外水分量の減少も認められた。また、栄養状態の指標である体細胞量(BCM)も早期栄養開始群で有意に高値を示した。このことから、早期経腸栄養の開始は体組成の維持・改善に有効であることが示唆された。
|