研究実績の概要 |
重症患者における栄養管理の重要性は広く認識されている一方で、侵襲下においては有効な栄養指標や予後指標はなく、栄養投与量や適切な栄養組成についても統一した見解はない。体組成計により測定できる細胞透過性の指標である位相角が、重症患者の栄養予後指標となるかを検討した。徳島大学病院ICUに入室した成人患者120人を対象とした。体組成計はBioScan920-II(Malton)を使用し、フルテスト法にて測定した。BMI、APACHEIIスコア、血液検査データ、ICU在室日数、入室後60日死亡率、人工呼吸器装着日数を記録した。また、位相角と体細胞量/細胞外質量比の相関を調べた。統計処理にはGraphPad Prismを使用しT-test及びSpearman correlation testを行った。対象患者の平均年齢は62.3±14歳(男性、平均BMIは21.87±4.17kg/m2、APACHEIIスコアの中央値は22(11-43)であった。入室後24時間以内の位相角は体細胞量/細胞外質量比と有意な相関を示した(r2=0.8517、p<0.0001)。ICU在室日数、人工呼吸器装着日数とも有意な相関を示した(r2=0.3092, r2=0.3550, p<0.0001)。一方で、APACHEIIスコア及びCRPとは相関関係を示さなかった。ICU軽快退室例の入室時位相角の平均は7.94であるのに対し、60日以内に死亡した群の平均位相角は4.97であった(p<0.001)。敗血症患者は、敗血症でない患者と比較して位相角は有意に低かった(4.86 vs 7.54, p<0.001)。また、位相角を低値群、正常群にわけると、エネルギー投与量に対しては低値群ではやや少ないエネルギー投与量がもっともタンパク異化が抑制されるのに対し、正常群では投与量が多いほど異化抑制に働いた。
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