研究課題/領域番号 |
15K16209
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研究機関 | 静岡県立大学 |
研究代表者 |
本間 一江 静岡県立大学, 食品栄養科学部, 助教 (80724765)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 小腸 / 短鎖脂肪酸 / フルクトース / ヒストン修飾 |
研究実績の概要 |
長期的な絶食は、小腸刷子縁膜の消化酵素の活性を低下させるだけでなく消化吸収関連遺伝子の発現を低下させることで、消化吸収能の低下をもたらすことが知られている。また我々は、食事中の糖質に応答して発現変動する遺伝子の調節にはその遺伝子周辺のヒストン修飾が関与していることを明らかにしてきた。本年度は、絶食-再摂食に伴う小腸の二糖類水解酵素や糖輸送担体の遺伝子発現の変動における、ヒストン脱アセチル化酵素阻害作用のある短鎖脂肪酸の影響を検討した。 SD系雄ラットを3日間絶食させ、対照食または5%酪酸ナトリウム添加食を再摂食させた。再摂食開始12時間または24時間後に小腸組織を摘出し解析に用いた。3日間の絶食により、空腸および回腸の湿重量は著しく減少したが、空腸湿重量は、再摂食12時間後には有意に回復した。空腸組織におけるスクラーゼ、トレハラーゼおよびマルターゼの全活性は、3日間の絶食により減少し、再摂食12時間から増加した。一方、ラクターゼの全活性は3日間の絶食で低下せず、再摂食によって増加した。ラクターゼの比活性およびLPH mRNA発現量は、対照食と比較して酪酸ナトリウムの添加によって増大した。一方、小腸吸収上皮細胞に特徴的な核内転写因子やヒストンアセチル化酵素のmRNA発現量には、酪酸の影響はなかった。本研究より、ラクターゼの誘導において、酪酸はLPHの転写活性に正の影響を及ぼすことが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
栄養素応答性の小腸消化吸収関連遺伝子の発現誘導機構を明らかにすることを目指し、本年度は短鎖脂肪酸の検討を進めた。
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今後の研究の推進方策 |
本研究では、フルクトース輸送担体GLUT5のmRNA発現量は、酪酸添加の有無に関わらず再摂食12時間において有意に増大した。これは、食餌に含まれるスクロースに由来するフルクトースによってGLUT5の発現誘導が起こったためと考えられる。Caco-2細胞を用いた実験において、酪酸やHDAC阻害剤の添加は、ヒストンアセチル化や小腸特異的な転写因子Cdx-2のプロモーター活性を増大させるという報告があるが、本研究では、再摂食12時間後におけるGLUT5のmRNA発現量の増大に酪酸添加による影響はなかった。今後は、クロマチン免疫沈降法を用いて、LPHおよびGLUT5遺伝子周辺のヒストンアセチル化レベルが変化していたかについて検討する。
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