研究課題/領域番号 |
15K16211
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研究機関 | 静岡県立大学 |
研究代表者 |
保田 倫子 静岡県立大学, 食品栄養科学部, 助教 (00707036)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | セシウム / 腸管 / 吸収阻害 / 排泄促進 / 食品機能 / フラボノイド / Caco-2細胞 / Ussing chamber |
研究実績の概要 |
東日本大震災の際の原発事故による食品・飲料水の放射性セシウム(Cs)による汚染と内部被ばくは社会問題となり、放射能汚染を未然に防ぐ対策は勿論、ばく露時の健康被害を最小限に留めるための対策も極めて重要である。放射性Csの体内への吸収を抑制し、消化管内への移行を促進する効果を持つ物質により、放射性Csの体外への排泄を促し内部被ばくを防ぐことが期待できる。プルシアンブルー(PB、鉄の無機結晶、青色色素)はセシウムを吸着する作用があり、放射性物質の大量摂取事故などの際に指定公共機関に限定して使用することが定められているものの、日常的に予防策・防御策として摂取することは難しい。そこで、日常的に予防策として摂取できる食品にそのような効果を持つものがないかを探索するために、マウス空腸を装着した Ussing chamber(ex vivo)、ヒト結腸癌由来 Caco-2 細胞(in vitro)を用い、Cs の腸管を介した透過についての新たな評価系の構築を試みた。半透過性膜付きインサート上でCaco-2細胞を腸管上皮様に分化させ、Csの腸管を介した移行の評価のためにApical(A)側もしくはBasolateral(B)側からCsCl溶液(0、1.0、5.0 mM)を処理し、経時的にB側もしくはA側の培地を回収し、濃硝酸により灰化した後、ICP-MSによりCs量を測定した。C57BL/6マウスの空腸をUssing chamberに装着し、粘膜側(M)もしくは漿膜側(S)にCs(1 mM)を含むKrebs-Ringer液を処理し、経時的にS側およびM側のから溶液を回収し、同様にCs量を測定した。これらの検討により、2つの評価系を構築した。Caco-2細胞を用いた方法では、Csの体内への吸収を抑制するために実用化されているプルシアンブルーの作用を確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度の実験結果を受けて、セシウムの体内への吸収と排泄に影響を及ぼす食品因子を探索するための新たな実験系の確立を試み、その実験系を用いた予備的な研究により、食品に含まれる機能性フラボノイドに効果が期待できることがわかっており、それについて現在、さらに研究を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
今年度に確立した方法をさらにブラッシュアップすると共に、機能性フラボノイドのセシウムの体内への吸収および排泄に及ぼす効果の評価試験を進め、その作用機構についても検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
静岡県立大から椙山女学園大への異動のため、研究態勢のセットアップについての研究費について考慮したため
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次年度使用額の使用計画 |
灰化処理用器具、装置、細胞培養用装置等
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