本研究により、地震による被害と人々の不安を、少しでも低減することを目指す。東日本大震災の際の原発事故による食品・飲料水の放射性セシウムによる汚染とその内部被ばくは、現況でも重要課題の一つである。日本、世界においても起こりうる地震を想定し、放射能汚染を未然に防ぐ対策は勿論、ばく露時の健康被害の低減対策は極めて重要であり、放射性セシウムを体内に吸収させない、速やかに排泄させることは、その解決法の一つである。日常的に予防策として摂取できる「食品」に、放射性セシウムの体内への吸収阻害効果および体外への排泄促進効果を見出すことを最終目的としている。 本課題により、これまでに、ヒト結腸がん細胞Caco-2をセルカルチャーインサート上で腸管上皮様に分化させ、セシウムの腸管における透過(apicalからbasolateral、basolateralからapicalへの塩化セシウムの移行)を調べる実験系を確立できるよう検討してきた。本年度は、この実験系を細胞の培養条件等をさらに検討することで、実際に使用できるように実験系を確立した後、いくつかの食品成分についてセシウムの透過に及ぼす効果を検討した。ヤマトイモエタノール抽出物、グルカン数種についてその効果を調べたが、これらはセシウムの腸管モデルにおける透過に影響を及ぼさなかった。一方、フラボノイドについてもいくつかセシウムの透過に対する効果を検討した結果、タマネギ等に含まれる機能性フラボノイド、ケルセチンにapicalからbasolateralへのセシウムへの透過を抑制する効果がみられることがわかった。大豆由来の機能性フラボノイド、ゲニステインには逆にapicalからbasolateral側へのセシウムの移行を促進する効果が見られた。
|