臨床の場での栄養管理にかかわる大きな問題の1つにリフィーディングシンドロームがある。これはガンや感染、消化器疾患やその手術などで長期かつ高度のエネルギー摂取不足である患者に輸液を含む栄養を再摂食(リフィーディング)させたときに発生する重篤な病態である。しかし、その予防と治療の基礎となるリフィーディングシンドローム発症の分子機構は明らかでない。そのため有効な治療法も確立されていない。そこで本研究ではその発症機構を解明するため、リフィーディングシンドロームモデル動物を作製し、予防・治療を目指した栄養療法の開発を目的としている。 昨年度、モデル動物にカテーテル留置手術を施し、中心静脈栄養法を用い急速かつ十分量の栄養を投与することで、顕著な低リン血症を呈するリフィーディングシンドロームモデル動物を作成した。さらに、リフィード時にリンを供給することで低リン血症を防ぐレスキューモデルの作成も成功した(投稿済み)。 リフィーディングシンドローム発症メカニズムの解明のため、リフィーディングシンドローム動物、レスキューモデル動物で糖代謝・リン代謝の解析を行ったが、極度の低栄養がもたらす糖代謝・リン代謝の破綻が確認された。そのため、詳細なメカニズムの検討に困難が考えられたため、リフィーディングシンドロームモデルより症状の軽いモデルを解析し、リフィード前後での糖代謝・リン代謝の解析を行った。その結果、リン代謝・糖代謝のホルモン変動、筋肉・肝臓でのトランスポーター発現変動を確認した。これらの結果について国内外に発信予定である。
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