研究課題/領域番号 |
15K16215
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研究機関 | 天使大学 |
研究代表者 |
松下 真美 天使大学, 看護栄養学部, 助教 (60517316)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 肥満 / エネルギー消費量 / 褐色脂肪組織 / タンパク質 |
研究実績の概要 |
我々は既に、通常の食事を摂取した時のエネルギー消費(食事誘導熱産生)が、褐色脂肪活性の高い被験者では低い被験者に比べて高くなることを明らかにし、褐色脂肪が食事誘導熱産生に寄与することを明らかにしている。そこで、本研究では褐色脂肪による食事誘導熱産生に対する食事タンパク質の量と質の影響を調べるために、タンパク質含量を上げた食事を摂取した後のエネルギー消費などの応答を測定した。 1)被験者と褐色脂肪活性の評価 健康な成人男性15名をリクルートし、LSI札幌クリニックの協力の下、FDG-PET/CTを用いて褐色脂肪活性の評価を行い、高活性者8名、低活性者7名の2群に分けた。 2)食事誘導熱産生と褐色脂肪 タンパク質含量を上げた食事(PFC比=62:15:23)を摂取した後のエネルギー消費量を呼気ガス分析法により数時間に渡って測定したところ、基本食(PFC比=11:38:51)摂取の場合と同様に、両群とも30分後から2時間後まで有意に上昇し高値を持続したが、その増加量は何れも基本食に比べてはるかに高値であった。高活性者のエネルギー消費増加量は、摂取1時間後には低活性者の1.2倍、除脂肪あたりにすると1.3倍であった。摂取前値からの2時間に渡るエネルギー増加量を積算すると高活性者の方が有意に高値となることが明らかになった。これらの結果は、タンパク質摂取によって熱産生が強く起こりその一部に褐色脂肪が関与することを示唆している。現在、糖質と脂質の酸化量の指標となる呼吸商や血中成分の応答を解析中であり、これらをまとめて原著論文として発表すべく準備中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
FDG-PET/CTによる褐色脂肪の評価や食事誘導熱産生測定については、すでに申請者らが方法を確立しているので、研究計画を実施するに当たって特に支障はなかった。但し被験者については、当初の予定よりもリクルートできた人数が少なくなったが、結果を解析するのに最低限必要な人数は確保できた。事実、食事摂取、特にタンパク質摂取による熱産生と褐色脂肪の関係を明らかにすることができた。
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今後の研究の推進方策 |
1.タンパク質食摂取に伴う血中アミノ酸レベルの変化を網羅的に解析し、褐色脂肪活性、肥満度(BMI、体脂肪量、内蔵脂肪量など)との関係について、特に、アルギニンや分岐鎖アミノ酸に焦点を当てて解析する。 2.褐色脂肪高活性者と低活性者で差が見られるアミノ酸について、そのアミノ酸の含有量の多い食事・食品を摂取した時の食事誘導熱産生を測定し、更に数週間に渡って長期摂取した場合の効果について、褐色脂肪や体脂肪の増減などを中心に明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究に参加した被験者の人数が当初予定よりも少なくなったので、謝金に余剰が発生した。
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次年度使用額の使用計画 |
呼気ガス分析装置のセンサー交換時期(\80,000)のため、センサー交換およびメンテナンス代に充てる。
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