研究課題/領域番号 |
15K16216
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研究機関 | 九州女子大学 |
研究代表者 |
許斐 亜紀 九州女子大学, 家政学部, 講師 (40529658)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 亜鉛 / 造血障害 |
研究実績の概要 |
現代の日本における健康問題として、低血圧を伴う貧血や高血圧が挙げられる。一方で、日本人の全世代を通して亜鉛の摂取不足という栄養問題も重要な課題である。また、亜鉛の摂取不足では一般的に食事量の減少を伴う。平成27度からの2年間は、亜鉛欠乏と食事量の減少の2要因が造血機構にどのように影響を与えているのかを動物モデルを用いて検討することを予定している。 平成28年度は、造血機構への影響を調べるためにGATA2、GATA3およびGATA6遺伝子発現について検討した。SD系雄性ラットを用いて、各群あたり10匹ずつになるように、基準飼料であるAIN-93G飼料を与えた対照群(Control)、中等度亜鉛欠乏飼料を与えた亜鉛欠乏群(ZD)、pair-fed対照群(PF)の3群に群別して4週間飼育し、解剖時に腎臓を皮質と髄質に分けて保存していたものを測定のサンプルに用いた。Quantitative-RT-PCRで分析したデータはGrubbs testで棄却検定を行った後、Kruskal-Wallis検定ならびにConover-Imanの事後検定で群間比較を行なった。危険率は5%を有意とした。これまでの研究で亜鉛欠乏もしくは食餌摂取量の低下によりtotal RNA量そのものが低下することが明らかにしているので、対組織重量比だけでなく対total RNA比についても併せて検討した。 今回のノンパラメトリック検定におけるデータ解析の結果、GATA2、GATA3およびGATA6の対組織重量比と対total RNA比の全ては、髄質および皮質のいずれにおいても全群間で有意な差は見られなかった。以上の結果から、亜鉛欠乏での造血障害と長期的な食餌量の低下によって生じる造血障害の発生機序において、これらの遺伝子が影響している可能性が低いことが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度はGATA2、GATA3およびGATA6遺伝子のmRNA分析を行うことができた。これらの解析結果から亜鉛欠乏によって生じる造血障害と食餌摂取量の制限によって生じる造血障害の発生機序が、遺伝子の発現レベルで大きな影響を及ぼしていない可能性が示唆された。特に、GATA2については、造血に大きく関与する遺伝子とされていただけに大変有意義な結果が得られたと感じている。これらの結果から、おおむね順調に進展したと判断した。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度の進度は、遺伝子解析のみに終始し、当初の予定にあるMALDI-TOF-MS-MSによる分析を実施できなかった。そのため、平成28年度の研究費の一部を平成29年度に移行し、来年度に研究を続行することとした。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究計画の変更に伴い当初の予定にあった研究計画のすべてを実行することができなかった。そのため、分析の外部委託に充てる予定であった基金の一部を平成29年度に移行し、来年度に研究を続行することとした。
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次年度使用額の使用計画 |
今年度の研究費の残額を次年度に使用することにした。 平成29年度に継続して実験を行う。試薬の購入、実験実施のための旅費等に用いる。
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