研究実績の概要 |
ベージュ脂肪細胞は白色脂肪細胞と共通の前駆細胞より分化するが、褐色脂肪細胞と同様にUCP1を介して熱を産生する細胞である。Peroxisome proliferative activated receptor, gamma, coactivator-1α(PGC-1α)はPPARγのコアクチベーターであり、PPARγと共にベージュ脂肪細胞の分化と機能において重要な役割を担っている。ビタミンE同族体はPPARγの発現を誘導することから、本研究ではビタミンE同族体がベージュ脂肪細胞の分化とその機能に与える影響について検討を行なった。2016年度における検討で、ビタミンE同族体のうちδ-トコフェロールが最も強くPPARγとPGC-1αを誘導し、熱産生関連遺伝子の発現を増加させることが明らかとなった。そこで2017年度は、δ-トコフェロールが食事性肥満マウスにおいて肥満を抑制するか検討すると共に、δ-トコフェロールがPGC-1αを活性化するメカニズムについてさらに詳細な検討を行った。 δ-トコフェロールの摂取はマウスの体重推移に影響を与えなかったものの、高脂肪食(HFD)群と比較して、δ-トコフェロール摂取(HFD+δ-toc)群では腎周囲脂肪組織の重量が減少していた。また、病理組織学的検査からHFD+δ-toc群の脂肪組織では小型の細胞が観察され、δ-トコフェロールの摂取が脂肪組織においてベージュ脂肪細胞の分化を促進する可能性が示唆された。さらに細胞レベルの検討では、δ-トコフェロールがp38 MAPKの活性化を誘導することが明らかとなった。p38 MAPKの阻害剤処理によって、δ-トコフェロールによるPGC-1αとUCP1の発現誘導が抑制傾向にあることから、p38 MAPKの活性化がPGC-1αの活性化と熱産生タンパク質の発現誘導に寄与する可能性が示唆された。
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