シアリルラクトース(SL)は、N-アセチルノイラミン酸を主としたシアル酸にラクトースが結合した物質で、乳製品に含まれる。シアル酸を含む様々な糖鎖は細胞膜表面上のシグナル伝達を調整しており、脳神経伝達においても重要な働きをしている。そこで本研究課題 では、シアリルラクトースを栄養学的に摂取する事による高次脳機能への影響、得に記憶学習能への影響を観察する事を目的とした。 本年度は、記憶学習能低下モデル動物である加齢促進SAMP8マウスを用い、シアリルラクトースの摂取が記憶学習能に及ぼす影響を観察した。2週間シアリルラクトースを摂取させたSAMP8マウスを用い、記憶学習行動試験である新規物質探索試験を実施した。実験では、通常食を摂取した健常加齢SAMR1マウス群、通常食を摂取したSAMP8マウス群、および1%のシアリルラクトースを含む食餌を摂取したSAMP8マウス群の3群を設けた。その結果、健常対照群として用いたSAMR1マウス群に比べ、通常食を摂取したSAMP8マウスでは新規物質探索試験のスコアが有意に低下し、記憶学習能が低下する事を示した。一方で、シアリルラクトースを含む食餌を摂取したSAMP8マウス群では、SAMR1群と同等の行動試験スコアを示した。これらの結果から、シアリルラクトースの摂取は、記憶学習能の低下を抑制する可能性が示された。加えて、行動試験で用いた動物から摘出した脳を用いて、シアリルラクトースの記憶学習能低下抑制に関連する因子の測定を実施した。
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