研究課題/領域番号 |
15K16223
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研究機関 | 岡山県立大学 |
研究代表者 |
神崎 圭太 岡山県立大学, 保健福祉学部, 助教 (30637286)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | ビタミンB1 / 筋萎縮 / 筋力低下 / 欠乏症 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は,ビタミンB1欠乏が骨格筋の重量や機能(筋力や疲労耐性)に及ぼす影響をその機序を含めて明らかにすることである.平成27年度は,ビタミンB1欠乏が骨格筋の重量や筋力に及ぼす影響を,筋線維組成の異なる速筋と遅筋で検討した.ビタミンB1(チアミン)不含試料の投与では,摂食量や体重増加量が減少するため,筋萎縮の原因が低栄養とビタミンB1欠乏のどちらに由来するかを判断することはできない.そこでチアミン含量の異なる飼料(飼料1 kgあたり0.5,1.0,3.0,6.0 mgのチアミン塩酸塩を含む飼料)を4週齢のWistar系雄性ラットに4週間自由摂取させ,成長抑制がみられない場合においても筋量や筋力が低下するかどうかを,被験筋として長趾伸筋とヒラメ筋を用いて検討した. 初めの3週間の摂餌期間では,体重増加量や摂餌量に4群間で差異はみられなかったが,その後0.5 mg群では,他の3群に比べて体重増加量と摂餌量に低下がみられた.血中ビタミンB1濃度は,6.0 mg群では変化がみられなかったが,摂餌1週間後より,3.0 mg群では約50%に.1.0 mg群および0.5 mg群では約15%に低下した.4週間の飼育期間終了後に摘出した長趾伸筋とヒラメ筋のビタミンB1濃度は,1.0 mg群および0.5 mg群で低下がみられた.また,ピルビン酸脱水素酵素活性は,長趾伸筋とヒラメ筋ともに,1.0 mg群および0.5 mg群で低下がみられた.長趾伸筋とヒラメ筋の重量と筋力は,他の群に比べ0.5 mg群でのみ低下がみられたが,単位断面積あたりで補正した筋力には,4群間で差異はみられなかった.また,ミオシン重鎖のアイソフォームの分布にも,4群間で差異はみられなかった.以上の結果は,摂食量や体重増加量の減少を伴わないビタミンB1欠乏では,骨格筋の重量や筋力は低下しないことを示唆する.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成27年度に予定していた「ビタミンB1摂取量の差異が骨格筋のビタミンB1濃度および代謝酵素活性に及ぼす影響」と「ビタミンB1欠乏が骨格筋の重量や筋力に及ぼす影響」に関する検証はおおむね達成できた.しかしながら,研究概要で述べたように,筋重量や筋力の低下は,摂餌量や体重増加量が減少する条件でのみ認められ,これらの減少を伴わないビタミンB1欠乏においても,筋量や筋力の低下が起こるという予想を支持する結果は得られなかった.そのため,当初実施が予定されていた酸化的修飾やタンパク質分解の有無についての検討は行わなかった.現在は,コントロール群として,摂餌量を同一にする群を新たに設け,摂餌量の減少が筋量の増加が抑制された原因であるかを検討している.
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度は,当初の研究計画の通り,ビタミンB1欠乏が骨格筋の疲労耐性に及ぼす影響を検討する予定である.すでに予備実験において,摘出筋をリンガー液中で収縮させるin vitro収縮モデルでは,疲労耐性にビタミンB1欠乏の影響はみられないが,麻酔下において坐骨神経からの電気刺激を用いて収縮を誘起するin situ収縮モデルでは,ビタミンB1欠乏に伴い疲労耐性が低下することを確認している.今後は疲労耐性が低下する原因や,疲労耐性が低下する摂餌期間などさらに検討を進めていく予定である.また,平成27年度に実施しきれなかった内容(ビタミンB1欠乏に伴い骨格筋量が低下する原因に関する検討)も並行して実施する予定である.
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