研究課題/領域番号 |
15K16226
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研究機関 | 国立保健医療科学院 |
研究代表者 |
大久保 公美 国立保健医療科学院, その他部局等, その他 (80407577)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 食事価格 / 栄養素摂取量 / 食品摂取量 / 社会経済状況 / 国民健康・栄養調査 |
研究実績の概要 |
本研究の初年度は、食事摂取データから食事にかける費用(食事価格)を算出するための計算プログラムを確立し、算出された食事価格と社会経済状況、生活習慣および食品・栄養素摂取状況との関連を検討した。 ①食事摂取データから食事価格を推定するための計算プログラムの確立 平成25年度国民健康・栄養調査の食事記録に出現した1425項目の個々の食品番号に対し、各食品の特性を考慮しながら、平成25年度小売物価統計調査から得られた各食品の価格を当てはめ、食品価格データベースを作成した。そして、個人ごとに各食品摂取量に対する食品価格を算出し、すべての食品価格を合計することにより食事全体の価格を算出した。 ②食事価格と社会経済状況、生活習慣および食品・栄養素摂取状況との関係 平成25年度国民生活基礎調査および国民健康・栄養調査の調査票情報をリンケージし、20歳以上の成人4658名を対象に、①で算出した個人ごとの食事価格と社会経済状況、生活習慣および食品・栄養素摂取状況との関連を検討した。その結果、エネルギー調整済み食事価格(円/1000 kcal)は、若年齢、低学歴、低家計支出総額、世帯人数が多い者、運動習慣のない者、借家住まいの者において有意に少ない傾向が見られた。また食事価格は、野菜類、果物類、魚介類、肉類、大豆製品摂取量と負の関連が見られ、一方、穀類、卵類、油脂類摂取量と正の関連がみられた。栄養素レベルでは、食事価格はたんぱく質、アルコール、食物繊維、コレステロール、そして検討したすべてのビタミン・ミネラル類の摂取量と負の関連が認められ、炭水化物摂取量とは正の関連が認められた。 本研究により、全国規模の食事調査結果から食事価格を推定することが可能となり、さらに食事価格が低く栄養価の低い食品・栄養素摂取状況へとつながりやすい集団の特徴が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画時においては、所得等の社会経済状況に関する項目が含まれている平成22年度および23年度の国民健康・栄養調査調査票情報を用いて食事価格に及ぼす影響を分析することとしていた。ところが、調査票情報二次利用申請時に当該年度の食事関連項目はすでに二次加工されたもののみであり、本研究を遂行するうえで必要な粗データ情報が利用できないことが明らかとなった。粗データが利用できるのは平成24年度以降の調査票情報であるが、所得等の社会経済状況に関する情報は収集されていない。そのため、平成25年度国民生活基礎調査の調査票情報とリンケージし、学歴、所得、職業等の社会経済状況との関連を考慮する必要が生じ、利用する調査票情報の範囲について研究計画の変更を行うこととした。しかし、本研究の進捗状況としては順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、最適化法を用いた解析手法を確立し、現在の日本人の食事摂取状況を大幅に逸脱することなく、変容かつ実現可能な範囲で、食品市場価格を考慮した日本人の健康的な食品構成(もっとも安いコストで、もっとも栄養価の高い食品の組み合わせ)を見出すことを目的とする。本研究を遂行するうえで、食事最適化法の豊富な研究経験と知識を有する海外研究者に助言を依頼し、共同研究として進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究2年目の目的である食事最適化法を用いた解析手法の確立のために、当該研究の豊富な経験と知識を有するNicole Darmon教授(仏国立保健医学研究機構、マルセイユ)を平成27年11月中旬に訪問する予定であった。しかし、渡航前日にパリ同時多発テロが発生したため、急遽、渡仏を見合わせた。その後、研究会議の延期を調整していたが、互いのスケジュールが合わず、年度内の開催が不可能となったため、旅費等に大幅な使用額の差が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
延期されていた研究会議が、平成28年度5月末~6月中旬に実施される目処がたったため、昨年度の残額を旅費として使用する予定である。
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