最終年度は、最適化法を用いた解析手法を確立し、現在の日本人の食事摂取状況を大幅に逸脱することなく、変容かつ実現可能な範囲で、食品市場価格を考慮した日本人の健康的な食品構成(もっとも安いコストで、もっとも栄養価の高い食品の組み合わせ)を見出すことを目的とした。 平成25年度国民健康・栄養調査において、食事記録の有効なデータが得られた20-69歳男性1733名、女性2002名の既存データを活用し、食事最適化法を用いて、性・年齢区分別に各栄養素の摂取基準を満たし、かつ現在の食習慣を大きく変えない(目的変数:各食品群摂取量の現状値と最適化値の差の絶対値の和が最小となる)1日の食品構成、つまり最適化された食品群ごとの重量および食事価格を算出した。観察時の食品構成では、食事摂取基準を満たしていない栄養素の数は、男女それぞれ20-29歳では12、14、30-49歳では11、12、そして50-69歳ではいずれも7つであった。しかし最適化することにより、全ての性・年齢群において制約条件として設定した28栄養素すべての基準を満たした食品構成が数学的に得られた。観察時と最適化後の食品構成を比較したところ、男女ともに年齢の若い20-29歳、30-49歳の群に共通して、穀類(全粒)、野菜(緑黄色、その他)、大豆製品、乳製品(低脂肪)、塩味調味料の量に観察時と最適化後で大きな違いが見られた。一方、50-69歳群においては、穀類(全粒)、野菜(その他:男性のみ)、乳製品(低脂肪)そして塩味調味料以外の食品群については、観察時の摂取量は最適化後の量にかなり近い傾向が見られた。そして、現在の食事摂取状況を大幅に変えずに食事摂取基準を満たした健康的な食品構成を実現させるためには、全ての性・年齢区分において現在の食事価格より7-18%増やす必要があることが示唆された。
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