日本の食事は多様な形態と素材を有しており、この食の多様性が我が国の健康寿命を支えてきたことが考えられるが、それを裏付ける科学的根拠は乏しい。一方、食品因子が保健作用を発揮するためには、生体が食品因子を感知すること、すなわち食品因子センシングが重要であることが示唆されている。これまでに食品因子を感知する生体分子が数多く同定されており、その発現量は食品因子センシングにおいて重要な要素を担っている。本研究では、我が国でも有数の健康長寿地域である静岡県掛川市の地域住民を対象とし、食品因子センシング関連遺伝子発現と食事摂取パターンの関係について解析することで多様な食品の間で起こる機能的な相互作用について解明し、健康長寿に貢献する食の多様性の科学的根拠を提示することを目的とした。 平成28年度は、昨年度までに取得していた1000人超の掛川コホート被験者における食品因子センシング関連遺伝子発現量情報および食品・食品因子摂取量情報から、食品因子センシング遺伝子発現量を低下させる2種類の食品・食品因子の組み合わせ摂取パターンについて解析し、多数特定することに成功した。また、日本型の食事パターンと欧米型の食事パターンをスコア化することで、それら食事パターンと食品因子センシング遺伝子発現との関係について解析した。その結果、日本型食事パターンスコアは複数の食品因子センシング関連遺伝子発現量と正の関係を示したのに対し、欧米型食事パターンスコアは複数の食品因子センシング関連遺伝子発現量と負の関係を示すことを見出した。欧米型の食事パターンは食品因子センシングを抑制する一方、日本型の食事パターンは食品因子センシングを維持・促進することで日本人の健康長寿に寄与していることが示唆された。
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