クリルオイルは海中に生息するプランクトン南極オキアミから抽出されるオイルである。クリルオイルによる抗肥満効果がin vivo試験により報告されており、この効果はリン脂質型のEPAやDHAによるものだと推測されているが詳細な解析は行われていない。我々は、リン脂質型のEPAやDHAとは異なる脂溶性成分がクリルオイルに存在すると考え成分の探索を試みた。 マウス胎児由来3T3-L1繊維芽細胞は、デキサメタゾン、3-イソブチル-1-メチルキサンチン、インスリンで構成される分化誘導培地にて2日間培養することで、脂肪滴を含む脂肪細胞へと形態変化を起こす。分化誘導培地以外にもチアゾリジン誘導体やインドメタシンなどは単剤で分化を誘導する。興味深いことに、クリルオイルは濃度依存的に3T3-L1細胞を脂肪細胞へと分化を誘導するが、オリーブオイルや亜麻仁オイルなどの他のオイルは分化を誘導しなかった。そこで、クリルオイルに特有な成分を探索するための指標として脂肪分化(脂肪滴蓄積と形態学的変化)が最適だと考えた。 探索により、処理後2日間で脂肪分化が認められる成分2種類と、処理後5日間より脂肪分化が認められる成分3種類を見出した。脂肪分化に伴いPRDM16やPGC-1αの発現がメッセンジャーレベルで増大した。そこで、成分により褐色脂肪細胞への分化が促されると推測して、見出した脂溶性成分を分化誘導培地と共に添加すると、誘導脂肪細胞の数の増加と脂肪細胞に蓄積される中性脂肪量の顕著な減少が観察された。 本研究で見出した脂溶性成分の機能評価はH29年度から開始する科研費(基盤研究C)「脂溶性食品成分によるミトコンドリア機能覚醒と抗肥満効果の解明」に繋がる。
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