歯周病は歯の欠損要因となるだけでなく、循環器疾患や糖尿病などの全身疾患と関連することが報告されており、予防・治療の重要性が指摘されている。歯周病は加齢に伴い罹患率が増加する傾向がある。また女性では、ホルモンバランスが変化する時期に口腔環境が悪化しやすいことが報告されている。しかし、歯周病原細菌の感染様式や生活背景との関連性については明らかにされていない点が多い。そこで、本研究では、妊娠・出産・育児を迎える前の女性(女子大学生)と出産後育児中の女性とその子、更年期以降の女性(高齢女性)における歯周病原細菌感染状況と生活習慣について検討することを目的とした。平成29年度は、前年度実施した女子大学生と高齢女性の調査に引き続き、出産後育児中の女性とその子の歯周病原細菌感染状況と生活習慣に関する調査を実施した。 歯周病原細菌の中でもレッドコンプレックスとよばれる3菌種(P.gingivalis、T.forsythia、T.denticola)について、女子大学生と出産後育児中の女性、高齢女性の歯周病原細菌感染状況を比較したところ、女子大学生では出産後育児中の女性および高齢女性に比べ、感染率が低い結果であり、妊娠・出産前の世代へのケアの重要性が示唆された。しかし、調査時点における歯みがき習慣に関しては差がみられず、具体的にどのようなケアが有効であるかについては今度の検討課題である。出産後育児中の女性の子においては、母親が感染している場合に子が感染している率が高い菌種がみられた。母子感染の要因に関しては今後詳細な検討が必要であると考えられた。
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