研究実績の概要 |
平成27年度は,食物への注意度の測定・評価方法,および食事中の食物への注意度が食後の空腹感と満足感に及ぼす影響を検討した。健康な成人男女9名は視線追跡装置を装着し,5分間の座位安静後,テレビを視聴しながら基準食(シリアル+牛乳)511 kcalを摂取し,2時間の安静を保った(Non Attentive Eating, n-AE)。対照条件として,基準食に視線を集中して摂取するように指示した(Attentive Eating, AE)。実験は早朝空腹の状態で行った。食事中,被験者の食事の様子を観察するために,目立たない位置から動画を撮影した。測定項目は,食事時間,食物への注意度(食事時間に対する食物の注視時間の割合),咀嚼回数,食事の直前・直後,食後30,60,90分の主観的な空腹感および満足感(Visual analog scale)とした。食事時間は両条件間に違いがなかった。食物への注意度は,AEが約90%,n-AEが約5%であった。咀嚼回数は両条件間に違いがなかった。主観的な空腹感は,総じて,AEに比べてn-AEが有意に高く,満足感はn-AEが有意に低かった。食事中に食物への注意を阻害した場合,食後の満足感が得られにくく,空腹感を感じやすくなること,いわゆる「ながら食べ」が過食へつながる可能性があるという重要な示唆が得られた。
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