食品中のプリン体は、総プリン体量(尿酸換算値)として評価されることが多いが、プリン体の存在様式は核酸、ヌクレオチド、ヌクレオシド、プリン塩基と様々であり、腸管吸収および尿酸への代謝過程、さらにエネルギーとしての再利用効率が一様ではないことも考慮すべきである。本年度は、食品を分子種(核酸、ヌクレオチド、ヌクレオシド、塩基)別にプロファイリングする研究を進めると共に、プリン体の中でも旨み成分として知られているイノシン酸(IMP)やグアニル酸(GMP)を含む食品負荷による、尿酸値への影響を明らかにすることを目的とした。また、食品は生で食べるものを除き、多くの場合何らかの熱処理により調理されて食されていることから、これら食品に含まれるプリン体、の分解について、加熱方法(湯煎およびレンジ)、加熱温度および加熱時間の違いに着目しプリン体含量の変化についても解析した。その結果、旨み成分であるモノヌクレオチドは比較的熱に安定であること、食品により同じ加熱方法でも溶出量や分解率に違いがあることが明らかになった。消化管における吸収様式の評価には、透過性膜状に単層培養し腸管上皮様に分化させたヒト結腸癌由来細胞Caco-2を用い、経時的に透過液を回収した。プリン代謝動態の評価には、Caco-2細胞および肝がん由来細胞HepG2細胞を用い、22種類のプリン体について一斉モニタリングした。特定の食品添加の場合のみ、細胞内で負荷された成分だけでなく、代謝物であるキサンチンや尿酸値の上昇が認められた。標品単独や他の食品添加と異なり、含まれる食品成分の影響を受けて、尿酸値増加につながるプリン代謝動態下流の代謝が亢進したことが考えられた。測定した食品中プリン体量は、一般家庭においても利用できるようなプリン体量計算アプリケーションとして、すでにホームページで公開しており、随時更新した。
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