科学教育では,体験学習の重要性が広く認識されている。学校や自治体,NPO法人でもワークショップや体験教室が開かれるようになってきた。しかし,多くの体験学習プログラムは,何度も体験することが難しく,知識や学習姿勢の定着が不十分であるという問題点がある。体験学習における能動的な発見は,反復的な観察の中で生じる。この反復的な観察は,科学一般の研究にとっても不可欠な手順である。そこで本研究は,科学教育プログラム体験後も,日常で反復的に行えるワークショップ型教育プログラムを開発し,一般ユーザがこのプログラムを開発者不在の状況でも利用可能なシステムを構築することを目的とした。本研究では,実世界でも多く生起しているが,意図的に探すまで気づきにくい錯覚現象をテーマに取りあげた。受講後も,日常で錯覚を発見するという反復的な観察姿勢につながると考えたからである。 平成27年度は,ワークショッププログラムのパッケージ化に向け,複数回のワークショップの実施を通して大量のデータを収集し,データの類型化を行った。平成28年度は,一般ユーザが教育プログラムを運営できたかどうかの判断基準を明確にするための準備をすすめた。具体的には,ワークショップ素材の作成に必要な情報公開の環境整備,ワークショップ到達度の指標作成,目的と対象に応じたワークショッププロトコルの修正と検証である。また,科学館関係者等へのヒアリングも行った。平成29年度は,これまでの研究成果を総括し,国際学会発表を行った。さらに,本研究の取り組みが表彰されたり,教育機関からのワークショップ実施の依頼を受けたりした。
|