近年の国際学力調査の結果から、日本の生徒は科学的知識などの理解度については高い数値を示しているが"Nature of Science"の内容についての理解が不十分であると指摘されている。こうした問題状況に対して、欧米の国々の多くは,実際に,"Nature of Science"の内容を学習内容の一部として導入した理科カリキュラムが開発されている。そこで本研究の目的は,今後、日本の理科教員養成課程においても"Nature of Science"の内容を導入し、理科教員養成システム全体を再検討することである。その上で、日本において"Nature of Science"の内容に関する教員養成プログラムを開発し、その有効性を実証的に解明することである。 特に平成30年度(最終年度)は,平成29年度までに得た知見に基づき研究を進めた。第一に,教員養成課程に学生を対象に科学論的内容と関連する理科の観察や実験の探究スキルに関する質問紙調査を実施した。この調査は,昨年度の調査結果に基づき,昨年度の調査結果を補完するためのものである。第二に,平成29年度から継続的に調査している"Nature of Science"に関する教材を分析して授業実践を実施した。これまでに得た教材の内容構成の知見をもとにICTに関する具体的な教材であるデジタル教科書を用いて授業実践を実施した。また,質問紙調査で得られた結果および"Nature of Science"の単元の中で取り扱われていた観察や実験の安全指導に関する知見をまとめ,科学論的内容の学習に関する教材および教授・学習プログラムを開発した。教材の分析および質問紙調査の実施の遅れから,残念ながら開発した教授・学習プログラムの有効性の実証的検証を十分に行うことができなかった。それらについては今後の課題としたい。
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