教材開発において、交雑個体(ニホンイシガメ×クサガメ)のDNAマーカーによる検出を、人体に無害な染色試薬と青色LEDトランスイルミネーターを用いて可能とし、増幅断片DNA検出の様子は、学校等学習現場で小型泳動装置を用いてリアルタイムで観察できるようにした。また、系統学習で用いるカメ類のDNA塩基配列を得るため、野外で捕獲したカメ類から血液を採取し、DNAを抽出してPCR法で増幅し、塩基配列を決定したものを用いて系統樹を作成した。これらを学習プログラムに取り入れることによって、カメ類の系統と遺伝子汚染の現状を身近に感じる学習を可能とした。カメ類を用いた教育プログラムでは、基礎編を作成し、カメの体のつくりや外来生物、動物愛護法に関する講義を協力校で実践した。また、発展的な内容となる系統学習プログラムは、静岡大学において協力校の生徒を対象に実施した。教員対象の講座では、県内の理科教員150人に対しカメ類を用いた学習プログラムについて提案するとともに、外来種の現状と取り扱いについて周知した。また、県内の小中学約800校において外来生物に関する啓発用リーフレットの配布とカメ類の飼育状況に関する調査を実施し、県内の学校で飼育されているカメ類の中に外来種が数多く含まれることを明らかにした。それらには、交雑したと推測されるものや2016年10月に外来生物法によって飼育が規制される種類が確認され、引き取り等で対応した。また、学校・行政・地域が連携した外来種問題の啓発を目的とした市民参加型カメ類調査を、平成27年度に2回、平成28年度に3回実施した。 以上の結果は、第18回日本カメ会議研究会で発表し、外来カメ類の啓発を目的とした市民参加型カメ類調査に関する結果は、静岡市立日本平動物園爬虫類館において作成パネルを常設し、さらにラジオやテレビ等で紹介した。
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