医学生・研修医の教育方法の一つとしてシミュレーション教育が行われており、模擬患者(simulated patients: SP)が参加する教育やシミュレーター(医学教育用マネキン)を用いる形式など多くの大学で取り組まれ、その工夫と成果が報告されている。しかし、医療用Moulage(特殊メイクの意、以下、ムラージュ)を用いた実践報告は少ない。ムラージュとは、傷や患部を模造して再現したものを意味し、古くは、蝋で作られた精緻な模型(蝋製皮膚病型模型)を指し、現代では、シリコンやラテックスなどの樹脂やゴムで傷や患部を再現した特殊メイクが総じてムラージュと呼ばれている。 本研究では、患部・病態を再現するムラージュを開発し、学習教材としての活用範囲を明らかにすることを目的としている。これまでムラージュはメイク技術の難易度が高いことや複数のSPに対して同じムラージュを準備することが困難など、簡易化・標準化に課題があった。 平成28年度に実施した転写シールを用いたムラージュの開発により、これまで課題であった簡易化・標準化が改善できた。しかし、シールの特性上、転写シールで作成できるのは平面に限られることが課題であった。 平成29年度は転写シールを組み合わせた立体的なムラージュの作成方法を模索した。 平成30年度は前年度に引き続きムラージュの開発とムラージュによる教材開発のワークショップを開催した。ムラージュの開発に関しては、転写シールでの皮膚トラブル等の問題点の解決のため、安全性を重視したムラージュの開発を行った。ワークショップは、医師・医療系の教育研修に携わる方を対象とし、本研究の成果の公表に繋がり、又、実用化に向けての知見が得られた。
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